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猫の爪除去手術

 

この手術をご希望されていて、今このページをご覧になっている方へ。

 

初めにお詫びいたします。

 

私たちの病院では、猫の爪除去手術は行いません

 

この手術を行う前に、飼い主様には是非、他に行えることを全て試していただきたいと思っています。

 

猫の爪除去手術/長谷川動物病院
第3、第2指骨部/子猫のへやより

  

時々、猫の爪除去手術をお願いされます。

 

新築のお家だったり、お家や家具を大切に思われている方、ご家族に反対されて切羽詰まっていらっしゃる方からです。

 

 

この手術は、前足の爪の生えている末節骨(第3指骨、ただし親指は第2指骨)左右10本を全て、爪の基底胚細胞を残さないように切除する手術です。

 

爪だけではなく、骨ごと取り除く手術です。

 

虐待であるとして、ドイツ、フィンランド、スイス、オーストラリア、ニュージーランドなど、この手術を禁止している国も存在します。

 

時々、避妊や去勢手術と同程度に考えている方がいらっしゃるように感じます。

 

けれど不妊手術とは全く意味合いが違い、声楽家が声を、音楽家が聴力を、画家が視力を永久に失うようなものとお考えください。

 

 

爪除去手術を希望される、そういうお考えのご家庭では猫にストレスや葛藤が生じて、爪除去後にも他の問題行動が起きる可能性が考えられます。

 

ですので、最初から手術だけを希望される場合には、対応できませんとお話ししています。

 

 

以前、どうしても必要ということで行なった際、猫ちゃんの苦痛を目の当たりにして以来、行わなくなりました。

 

可能ならば、まずお家の環境や爪とぎ器を、猫が好むように整えていただきたいです。

 

人間の都合を優先させると、いつまでも改善は望めません。(中には、人間に合わせてくれる優しい猫ちゃんもいますが…)

 

怒りに任せて猫を叱ったり、叩いたりすれば、むしろ状況は悪化するでしょう。

 

それは猫の嫌がらせではありません。ただ怖がっているだけです。

臆病な猫をさらに怖がらせても、何もいいことはないのです。

 

 

それでも改善されない時には、(過剰な)爪とぎには理由がないか、その原因や改善策を考えます。

 

 

毛づくろいと同様に、過剰な爪とぎは猫が感じているストレスや、不安な気持ちが原因している可能性が高いです。

 

そんな原因が取り除かれないまま、さらに苦痛を伴う爪除去までされたら、身体的だけではなく精神的苦痛が大きいでしょう。

 

爪とぎがなくなっても、不適切な排尿スプレー過剰な毛づくろいなど、猫がストレスを緩和するための行動が増える可能性があります

 

 

爪とぎをしている時の猫ちゃんは、生き生きしていると思いませんか?

そんな楽しみを奪われたなら、どうなるでしょう?

 

手術で爪とぎがなくなって、お家が痛まなくなったとしても、そんな猫ちゃんを毎日見ていて嬉しいでしょうか?

 

こういうことを理解していただき、手術を希望される前に、もう一度ご家族で話し合っていただきたいのです。

 

 

猫の爪は玉ねぎのように何層にもなっていて、爪を研ぐ時に1番外側の古い皮を剥がしています

 

年老いて爪とぎができなくなった猫ちゃんは、皮がむけずに爪が厚くなって引っ込まなくなり、歩くとコツコツ音がします。

 

こうなったら、爪切りの時に皮を剥いてあげてください。

 

 

猫の爪とぎには主に4つの目的があるとされています。

 

1)攻撃や木登り、狩りなど、実戦に備えたお手入れ(メンテナンス)

2)マーキング目的

3)不安な気持ちを落ち着かせたり、気分転換、ストレッチ、ルーティーン

4)飼い主の気を引くため

 

 

猫は基本自由な生き物ですから、自分の気に入った場所で爪とぎをします。

 

背伸びをするような高い位置で、爪が引っかかりやすい柔らかい材質のものが好みです。

 

用意してもらった爪とぎ器が気に入らなければ、お家の壁紙や柱や家具で、ガリガリする子もいるでしょう。

 

もしそうされたなら、その子の好みの材質と場所がわかりますので、好みにあった爪とぎ器(もっと気にいるような)を用意してあげてください。

猫の爪除去手術/長谷川動物病院
ネイルキャップ/長谷川動物病院

 

困った爪とぎを防ぐためには、

 

1)キャットタワーや垂直方向の長めの爪とぎ器、段ボール紙や麻紐など、色々な材質の爪とぎを複数個用意し、その子の好みを探る

2)古くなったソファーや絨毯を爪とぎ用にする

3)爪とぎをしてほしくない場所を、あらかじめツルツルした素材のガード用カバーや、アクリル板で保護しておく

4)爪とぎをして欲しくない場所の前に障害物を置き、その近くに爪とぎ器を置いておく

5)こまめに爪切りを行い被害を最小限にする

6)定期的にネイルキャップを装着する

7)不妊(避妊・去勢)手術

 

 

これらのことを実践していただいても改善が見られない時には、ぜひご相談くださいませ。

 

 

※時々お問い合わせをいただくのですが、診察を伴わない個々のご質問にはお答え致しかねます。申し訳ありません。