家族の一員である動物が、ある日『がん』であると宣告を受けたとしたら
そういう方たちに向けて、できるだけわかりやすく治療の流れを解説いたします
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まず全身の状態を確認後、体表に出来物があればその様子を観察し、その後全身を触診して体表部の各リンパ節の大きさ、固さ、形、その出来物が接する皮膚や筋膜組織との関連性、触診可能な腹部臓器の大きさ、辺縁の形、しこりの有無を調べます
無麻酔または鎮静下で、腰下および骨盤腔内リンパ節の確認を行います
リンパ腫や下半身にできた腫瘍、膀胱、前立腺、乳腺、肛門腺などの、腰下リンパ節群に転移しやすい腫瘍のステージングを行うための検査です
麻酔もいらず(小動物や、性格上必要な子もいます)ほとんど痛みを伴うことなく短時間で終わる検査なので、目に見える出来物のある子にはほぼ全例で行われます
腫瘍かどうか、腫瘍なら良性か悪性か、また腫瘍の種類(肥満細胞腫など)によっては、この検査だけで確定診断できることもあります
全身状態の把握と、直接見ることができない肺やその他の臓器への腫瘍の転移の有無や、胸腔と腹腔の臓器の状態(大きさ、位置関係)各リンパ節の大きさを調べます
写真はフェレットの消化器型リンパ腫で、肝臓、脾臓、腸間膜リンパ節、腰下リンパ節が大きく写っています
このフェレットは私が飼育していた女の子です
10年以上前のことですので、当時フェレットの腫瘍学の情報は乏しく、腫瘍に詳しい先生に抗がん剤のプロトコールを教えていただいて、色々な抗がん剤の治療を行いました
彼女の場合は(おそらくT細胞性だったので)どれも満足のいく効果は得られず、診断後半年で、6歳で逝ってしまいました
胸腔、腹腔内にある内臓やリンパ節、腫瘍の内部の状態や大きさ、周辺臓器との癒着の有無を知るために行います
他の検査でリンパ腫と診断がつかなかった子や、乳腺腫瘍が良性か悪性かを手術の前に知りたいときに有効な検査です
針生検で得られた組織の量で検査が可能です
細胞診の検査で診断がつかない時、今後の治療法を決めるために麻酔下で少量の組織を採取し、その腫瘍の正体(腫瘍名、悪性度、周囲組織への広がり)を知るために行う場合と、手術後に摘出腫瘍の病理診断を依頼する場合があります
その他の検査として、
MDR-1遺伝子変異検査、CT・MRI検査、
リンパ腫の細胞分類検査(B/T分類)などがあります
腫瘍の種類や、その子の状態によって必要な検査は異なりますので、事前に料金を含めた、詳しい説明を行います
検査結果をもとに、現在の状態、腫瘍の説明と、考えられる治療法やその効果予測などについて、ご理解いただけるように時間をかけて丁寧に説明をいたします
ご家族のご理解とご協力がなければ、治療を続けることができないからです
その上で、ご家族のお考えやご意向をお聞きして、治療の目指す目標となる、治療方針を決定します(根治を目指すかどうか)
その後は治療計画に則って、動物の健康状態や治療効果をもとに変更を加えながら、治療を行なってゆきます
限られた場所にできている腫瘍であれば、外科手術でとってしまうのが一番です(根治治療)
また顔面やお尻の周りなど、手術で取りきれない場所だったり、ご家族が手術を希望されない時は、腫瘍の種類によっては放射線療法が効果的である場合があります(緩和治療)
血管肉腫や乳腺癌などの転移の可能性が高いがんの場合は、外科手術で取れるだけ切除した後にリンパ腫と同様に、抗がん剤による化学療法によって、転移の抑制や腫瘍の成長を遅らせる治療を行います(緩和治療)
その子の体調やがんの進行度にもよりますが、これにより延命はもちろん、がん細胞の数を減らすことによって動物の一般状態を改善させたり、良い健康状態を伸ばすことが期待されます
がんがすでに進行していて、積極的な治療の効果が望めない時や、ご家族がそれらを希望されない時は、ご家庭での皮下点滴や栄養補給、介護の方法などを実演しながらお教えいたします(対症治療)
いろいろな理由で手術ができない、手術を希望されないときには、腫瘍の種類にもよりますが、お家で投与可能な抗がん剤や分子標的薬の飲み薬があります
一度私たちにご相談ください