骨折の整復手術は、随分少なくなりました。
以前、骨折といえばワンちゃんも猫ちゃんも、ほぼ交通事故が原因でした。
交通事故では、骨折だけではなく、内臓損傷、脊髄損傷、横隔膜ヘルニア、etc.もちろん即死の子もいます。
昔は外で繋がれて飼われているワンちゃんが逃げ出したり、故意に放して自由に散歩させる、困った飼い主の人たちがいたのです。
小型犬が増えたため、ワンちゃんはお家の中での事故、落下や着地の失敗などが原因の、主に前肢の単純骨折が多いです。
猫ちゃんは相変わらず交通事故がほとんどです。
普通、車にはねられたときには、猫は爪を出して地面に着地しようとしますので、指の爪がかなり擦り減ります。
なのに綺麗な爪をしているなど、原因のはっきりしない子もいます。
動物は話してくれませんからね。
時々、『猫は外に出してあげなければいけない動物である!』と、私から見ると、頑なに思い込んでいるような飼い主の方がいらっしゃるのですが、決してそのようなことはありません。
現に、私たちの病院のスタッフニャンコのマオくんは、病院から1歩外に出た途端に怖がって、慌てて病院の中に戻ろうとします。
それでも個体差がありますので、そのようなときは大きめのケージごと、短時間だけ外に出してあげることをお勧めしています。
リードをつけて、ワンちゃんのようにお散歩する猫ちゃんもいますね。
もしも事故に遭ってしまった場合は、できるだけ早くご来院ください。
骨折した時には、直後から周りの筋肉の収縮が始まります。
そのため時間が経ってしまうと、折れて変位した骨を元の状態に戻すことが困難になりがちです。
その分手術の時間もかかってしまいますので、骨をいくらか切除して短くして整復することもあります。
退院後は、指示された期間はあまり広くない(でも狭すぎない)ケージ内でお世話をして、激しい運動を控えさせていただきます。
骨折の整復には、手術と同じくらい術後の管理が大切なのです。
交通事故に遭うのは、その多くが血気盛んな若い雄猫ですので、大人しくさせておくのはなかなか至難の技ですね。
必要ならば、鎮静剤などのお薬を飲ませていただくこともあります。
それにしても、最近は外で見かける猫ちゃん自体が減りました。
猫ちゃんが家の中だけで飼育されるようになり、野良猫が減ったということは、私たち獣医師の目標が達成されてきているということです。
それ自体はとても喜ばしいことです。
ですが、私自身は少しさみしい気持ちがあるのも事実です。
私の子供の頃、猫はとても身近な生き物でした。
お腹をすかせた、痩せた子猫がさ迷っていたりして、子供心になんとかしてあげたいと思ったものでした。
今の子供たちは家で飼育していなければ、おそらく犬や猫を実際に見ることも、触れることもできないでしょうし、そんな感情を抱くこともないでしょう。
休日のお世話が難しいなどの理由で、今、学校飼育動物の飼育を行わない小学校が増えています。
子供達にとって、動物はテレビやスマホ、ゲーム機の中のものになりつつあるのかもしれません。
可愛く作り上げられていても、それは実物とは違います。
実物の柔らかさ、温かさ、匂い、心臓の鼓動は画面からは伝わりませんね。
イメージが先行して、実際に飼育してみると思っていたものと違う、こんなはずじゃなかったということも起きるかもしれません。
でもひょっとしたら、想像以上に可愛くって、その子のいない毎日は考えられなくなるかもしれません。
経験に勝る知識はありません。
知っているつもりでも直接接してみなければ、正しい理解はできないと私は思っています。
日本人と中国人、韓国人みたいなものですね。
最後はお話がだいぶ脇にそれてしまいましたが、動物たちの健康管理のご参考にしていただけましたら幸いです。