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犬の問題行動治療

長谷川動物病院/院長ブログ
なつくん:本文とは関係ありません

 

『問題行動』とは、人間と一緒に生活していく上で、人間にとって都合が悪い、して欲しくない動物の行動を言います。

 

ワンちゃんは人間のように『良いこと』と『悪いこと』というモラルもなければ、区別もできないと考えられています。

 

犬種によったり個体差はありますが、おそらく『嬉しい』『嫌だ』『したい』『したくない』と感じるくらいで、思考回路はとても単純です。

 

ですから人間がそうなってほしい状況やして欲しいことを、『ご褒美』を利用して、ワンちゃんが『喜んでしたい』と思うように仕向けるのです。

 

同様に、なってほしくない状況やして欲しくないことを、ワンちゃんに『嫌だ、したくない』と思わせたり、もっと楽しいことを用意して、そちらの方に注意を向けるように誘導します。

 

これと、『アイコンタクト』『待て』『よし』『座れ』がきちんとできるようにすることが、理想的なしつけの基本です。

 

キーワードは『嬉しい』『楽しい』『褒める』『ご褒美』『タイミングが大事』『一貫性』『毎日短時間』『欲求不満をなくす』『不安や緊張をなくす(人間の態度が重要)』『嫌なことを嬉しいことに変える』『好ましくない行動は関心を別にそらして止めさせる』

 

 

動物の問題行動は、飼い主のご家族によって、悪い意味で『しつけ』られてしまった結果であるということが多いようです。

 

例えば、うるさく吠えるワンちゃんを叱るつもりで、「静かにしなさい!」と女性が、甲高い大きな声で、毎回ワンちゃんに声がけをしていました。

 

この場合、人間がして欲しくない『無駄吠え』をするたびに、このワンちゃんが『嬉しい』と感じるご主人からの注目=『ご褒美』が、毎回もらえました。

 

『やったー!』ワンちゃんは、ますます頑張って吠えるようになることが想像できますね? 飼い主さんは止めてほしいと思っているのに。 

これではいけません。

 

問題行動の矯正治療にあたっては、まず診察をして身体的な異常がないかの確認を行います。

 

脳疾患神経疾患内分泌疾患痛みを伴う病気などが原因で起きている場合があるからです。

 

それからご家族には、本来の犬の習性や能力について人間の側の幻想や過度な期待、思い込みを捨て、正しく理解していただくための説明を行い、ご家族のお考えやご要望とのすり合わせを行います。

 

どんなことや物が、その子にとっての『ご褒美』や『』になり、『嬉しい』ことや『不快』なことなのかを知ることはとても大切です。

 

 

同じ『問題行動』でも、犬種、性別、年齢、ご家族との関わり方やその発生状況、場所、登場人物など、1つ1つ違い、結果的に矯正方法も違ってきます。

 

そのため現在起きている問題行動をできるだけ具体的にお話していただきます。

 

その上で原因となっている刺激と、行動の意味(ワンちゃんの心理)、問題を強化していると思われる環境やご家族の行動を明らかにし、仮説を立て、それに基いてご家族が実行可能と思われる具体的な改善策を提案いたします。

 

ワンちゃんの行動の意味は、本人に直接確認することができませんので、あくまでも人間の推察であり、『仮説』です。

 

仮説に沿った改善策で改善が認められれば、その仮説は正しかったと言えるでしょう。

 

 

ワンちゃんには、原因となっている刺激に徐々に慣れさせたり、『嫌なこと』を『嬉しい、楽しいこと』に、ワンちゃんが『楽しい』と思ってやっている困った行動を、もっと楽しいことを用意して『そっちの方がもっと楽しい』と思わせるように仕向け、現在の行動とは別の行動をとるように矯正トレーニングを行っていただきます。

 

この時に『アイコンタクト』『待て』『よし』『座れ』などの基本的なしつけがマスターできている子の方が、矯正はしやすいでしょう。

 

 

強い恐怖や不安が認められるワンちゃんに対しては、薬物を投薬していただくこともあります。

 

ご家族全員に治療の意味を理解していただけない場合は、改善は難しいと思われます。

 

ご家族の対応に一貫性がなく、お一人でも違った対応をされてしまうと、ワンちゃんを混乱させてしまい、治療がうまくいかなくなる可能性が高いからです。

 

問題行動の矯正治療の難しさはこういうところにあります。

 

 

以上の治療によっても、満足のいく改善が認められない場合や、ご家族が希望される場合には、動物行動治療の専門医をご紹介いたします。

 

 

 

動物たちの健康管理のご参考にしていただけましたら幸いです。

 

 

※時々お問い合わせをいただくのですが、診察を伴わない個々のご質問にはお答え致しかねます。申し訳ありません。