· 

犬アトピー性皮膚炎の治療薬

 

犬のアトピー性皮膚炎は

①もともとアレルギー反応を起こしやすい体質(アトピー体質)

②皮膚バリア機能が弱い

③生活環境にアレルゲン物質が存在する

 

これら3つ全ての条件が揃った時に、発症・悪化します。

 

なので、どれか1つでも改善すれば、アトピー性皮膚炎の症状も改善されるはずです。(現実には難しいですが😣)

 

 

遺伝的になりやすい犬種が存在し、日本では、柴犬ウエスティシーズーフレンチブルドッグ、T.プードルなどが知られていますが、それ以外の犬種でも発症します。

 

生後6ヶ月~3歳と若い頃から症状が出始めて、加齢とともに症状がひどくなる傾向があります。

 

また、最初は症状に季節性があった子も、だんだんと1年中発症するようになってきます。

 

痒みを伴うアレルギー性皮膚炎の症状は、足先の周り、耳、首、前枝・後肢の付け根、しっぽの付け根などに、左右対称に認められます。

 

慢性化し皮膚を掻き続けると、脱毛の他に、黒く色素沈着し、皮膚が厚くなり、脂っぽくなることもあります。

 

 

診断)

痒みを引き起こす他の原因疾患(ノミ、ダニなどの外部寄生虫、マラセチア、細菌、食物アレルギーなど)を除外し、症状などから総合的に判断します。

 

血液検査(IgE検査)リンパ球反応試験除去食試験などの検査結果は、アレルゲンを避ける治療&予防に役立てることができます。

 

 

治療)

⚫︎スキンケア(シャンプーと保湿)

⚫︎炎症・痒みの管理(薬物療法)

⚫︎悪化要因(ダニ・ノミ、食物などのアレルゲン、マラセチア、膿皮症など)を減らす

⚫︎療法食やサプリメント

 

アトピー性皮膚炎は、複合的な原因によって生じている皮膚病なので、治療も1点集中ではなく、少しずつでも複合的に行うことが望ましいです。 

 

犬アトピー性皮膚炎の治療薬/長谷川動物病院
 アトピー性皮膚炎のお薬の違い/犬のかゆみ.comより

 

今回は、薬物療法のお話で、最近使用頻度が多い分子標的薬(オクラシチニブ:錠剤と、抗体医薬(ロキベトマブ:注射のお話しをします。

 

 

アトピー性皮膚炎の『痒み』に対する治療や管理に用いられているお薬は、ステロイド剤抗ヒスタミン剤免疫抑制剤(シクロスポリン)インターフェロンなどがあり、減感作療法、外用剤、薬用シャンプーなどによるスキンケアなどが併用して行われています。

 

お薬にはそれぞれにメリット、デメリットがありますが、デメリットに注目すると、副作用の問題や投与後の効果の発現時期などがあります。

 

それら飼い主様の不安や不満を解消する新しいお薬として、近年、分子標的薬(オクラシチニブ)と抗体医薬(ロキベトマブ)が発売されました。

 

どちらのお薬も費用面はやや高価ではありますが、アトピー性皮膚炎の痒みに対する有効性は高く、効果発現も早く、副作用は少ないという飼い主様の期待に十分応えられるお薬です。

 

 

1)分子標的薬(オクラシチニブ)

2016年に、犬で認可された錠剤タイプのお薬(ヤヌスキナーゼ阻害剤)です。

 

アトピー性皮膚炎だけでなく、ノミアレルギー食物アレルギー疥癬などのアレルギー性皮膚炎に対して幅広く効果が期待できます。

 

ヤヌスキナーゼ(JAK)という酵素の働きを阻害して、痒みを誘発する体内の免疫物質(サイトカイン)インターロイキン31(IL-31)などの働きを抑えることで、アレルギー反応による痒みと炎症を抑制します。

 

投与後半日~1日と効果が出るのが早く、副作用も少ないです。(軽度の嘔吐や下痢を起こす可能性はあります)

 

ステロイド剤と違って、作用範囲がピンポイントなので、副作用が少ないのです。

 

ただ、あくまでも『痒み』を抑えるお薬であって、アトピー性皮膚炎を治すお薬ではないことを理解してください。

 

なので効果を維持するためには、基本的に飲ませ続けなければならず、投与をやめると痒みが戻ってしまいます。

 

また全ての痒みに効くわけではなくて、あくまでもアレルギー性皮膚炎の痒みに対して、効果を発揮するお薬です。

 

なので、痒みの原因がアレルギー性皮膚炎以外の病気のせいではないことを確認する必要があります。

 

比較的新しいお薬なので、長期間連続投与した時の副作用など、まだまだわからない点もあります。

 

症状を見ながら短期的に使用していただいたり、他のお薬や外用剤を併用していただくなどして、長期連用にならないように心がけています。

 

 

2)抗体医薬(ロキベトマブ)

2019年に、犬で認可された新しい注射タイプのお薬(モノクローナル抗体製剤)です。1回の注射で1月間効果が持続します。

 

アトピー性皮膚炎やアレルギー性皮膚炎の痒みに関係する体内免疫物質(サイトカイン)の1つ、IL-31を抗原抗体反応で中和し、症状の改善を促します。

 

なので、IL-31が関係しない他の痒みを生じる皮膚病には効果がありません。

 

IL-31を抗原として、ロキベトマブは抗体として作用するため、『抗体医薬』と呼ばれます。

 

投与後約1日と効果が出るのが早く、副作用も少ないです。(アレルギー反応、軽度の嘔吐や下痢を起こす可能性はあります)

 

投与が1ヶ月に1回の注射薬なので、飼い主様の毎日の投薬の負担が軽減され、その分スキンケアなど他の治療に専念できます。

 

あくまでも『痒み』を抑えるお薬であって、アトピー性皮膚炎を治すお薬ではないことをご理解ください。

 

効果を維持するためには、継続して注射を続ける必要があります。

 

また全ての痒みに効くわけではなくて、あくまでもアトピー性皮膚炎やアレルギー性皮膚炎の痒みに対して、効果を発揮するお薬です。

 

なので、痒みの原因がアトピー性皮膚炎以外の病気のせいではないことを確認する必要があります。

 

新しいお薬なので、長期間投与した時の副作用など、まだまだわからない点があります。

 

なので、症状を見ながら一時的に使用していただくなどして、長期連用にならないように心がけています。

 

 

痒がるワンちゃんをそばで見守ることは辛いことです。

 

特に今年の夏は暑さが長く続いているので、痒みが増している子が多いのではないでしょうか。本当に辛い夏です。

 

 

症状が改善して少しでも楽になれるように、お薬だけでなく、その子にあった治療法のご提案をいたします。ご相談ください。

 

 

 

※時々お問い合わせをいただくのですが、診察を伴わない個々のご質問にはお答え致しかねます。申し訳ありません。