尿路結石症(尿石症)は、尿中のミネラル成分がさまざまな条件下で結晶化し、やがて結石となって尿の通り道である尿路(腎臓、尿管、膀胱、尿道)のどこかに留まったり閉塞させたりする病気です。
結晶や結石が尿路の粘膜を刺激し傷つけることで、炎症や痛み、出血などを引き起こし、膀胱炎や血尿、そして最悪の場合は尿路閉塞から腎不全となり死亡する場合もあります。
尿結石による尿路閉塞のうち、特に尿道閉塞になるのはほとんどがオスです。
オス犬の尿道は、細くて長くて、おまけにカーブしていて陰茎骨まであり、出口に近付くにつれてさらに細くなるからです。
犬では、陰茎骨の始めあたりで詰まることが多く、触診で石を確認できます。
尿管閉塞が片側性の場合は、症状を全く示さないことも珍しくありません。
腎臓は、1つだけでも普通に生活できる臓器だからです。
なのでなおさら、画像検査を含めた定期的な健康診断が推奨されます。
尿結石の形成には、食事内容や生活環境の影響が大きいのですが、根本的な原因は体質です。
実際に、同じお家で同じフードを食べていても、結石ができる子とできない子がいます。
それでも食事の影響はとても大きいので、尿石症と診断された子は、再発予防のために療法食での食事療法と生活環境の改善が推奨されます。
結石の種類と好発犬種)
⚫︎ストルバイト:M.シュナウザー、シーズー、コッカー・スパニエルなど
⚫︎シュウ酸カルシウム:M.シュナウザー、シーズー、ヨーキーなど、脂質代謝異常症好発犬種
⚫︎尿酸アンモニウム:ダルメシアン、ヨーキーなど
⚫︎リン酸カルシウム
⚫︎シスチン:イングリッシュブルドッグ、M.ダックス、バセットハウンドなど
⚫︎シリカ
このうち、ストルバイト、尿酸アンモニウム、シスチンは、療法食による溶解が可能とされていますが、他の結石は外科手術による摘出が推奨されます。
原因)
●食事
ミネラル分の多い食べ物や水、タンパク質の多い食事は結石ができやすいとされています。
ほうれん草やキャベツ、レタス、ブロッコリーなどの生食は、シュウ酸結石ができやすくなるので避けましょう。
●細菌感染
膀胱内で細菌が増殖すると尿のpHがアルカリ性に傾き、さらに剥がれた粘膜細胞が核となって、ストルバイト結石ができやすくなります。
メスでは、膀胱から出口までの距離が近いので、細菌性の膀胱炎になりやすい傾向があります。
●肥満
脂質代謝異常や内分泌疾患では、シュウ酸結石ができやすくなります。
●尿量や排尿回数の減少
トイレを我慢させると膀胱に尿が留まる時間が長くなり、そのため尿が濃縮されて結石ができやすくなります。
また、膀胱炎を引き起こしやすくもなります。
冬に泌尿器疾患が増える原因は、寒くてトイレ(散歩)に行きたがらない(我慢する)、お水を飲みたがらない、運動不足で体内の代謝によって作られる水分が減る(尿量が減る)、などです。
●犬種
内分泌疾患や代謝性疾患になりやすい特定の犬種で、なりやすい傾向があります
先天性の門脈体循環シャントや、慢性肝障害などによって、血液中のアンモニア濃度が高くなると、尿酸アンモニウム結石ができやすくなります。
また、上皮小体ホルモンの過剰分泌によって、リン酸カルシウム結石が形成されやすくなります。
治療)
◆ストルバイト結石
小さい結石ならば、食事(療法食)で尿pHを中性~弱アルカリ性に保つように調節すれば、溶解することができます。
犬では細菌性尿路感染症を併発していることが多く、抗菌剤の投薬が必要です。
結石が大きかったり尿道閉塞を繰り返す場合は、外科手術の適用となる場合があります。
術後は、再発予防の目的で食事療法(療法食)が必要です。
◆シュウ酸カルシウム結石
食事(療法食)では溶かすことができませんので、外科手術によって摘出後に再発予防の療法食による食事管理が必要です。
◆複数の混合結石
食事(療法食)では溶かすことができませんので、外科手術によって摘出後に尿pHなどをもとに再発予防の療法食による食事管理を行います。
予防)
●お水を飲ませる工夫をする
・お水の器の数を増やして置き場所を分散させる(冬場は暖かい場所に置く)
・夏はお水を冷たく、冬は暖かくして飲みやすくする など
●排尿回数を増やす
トイレの数を増やしたり、外でしか排泄しない子は、散歩の回数を増やしましょう。
●適切なフードを選択する
毎日食べるフードは、品質や成分表示を確認して選びましょう。
ご不明な点は、病院スタッフに相談してください。
また海苔や鰹節などのミネラル分の多い食品は、食べさせないように注意しましょう。ミネラルウォーターも同様です。
●十分な運動と肥満の防止
肥満はいろいろな病気の原因となりますので、適切な運動と食事(カロリー)管理によって肥満を防止しましょう。
●おしっこチェック
回数、量、色、臭いや排尿時の様子などに気をつけて、チェックする習慣をつけましょう。
尿に結晶や結石が混じっていると、キラキラと光って見えることがあります。
雌犬の発情出血以外、おしっこに血液が混じるのは異常です。
●早めに診察を受ける
症状に気づいたら、放置せずに早めの治療で、更なる悪化や最悪の結果を防ぎましょう。
『知らなかった』せいで、大切な家族の一員を失わないように、動物を飼い始めたらその子のこと、病気のことを知る努力をお願いいたします。
以上、動物たちの健康管理のご参考にしていただけましたら幸いです。😊
併せてお読みください。
※時々お問い合わせをいただくのですが、診察を伴わない個々のご質問にはお答え致しかねます。申し訳ありません。