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高齢者のペット飼育

高齢者のペット飼育/長谷川動物病院
   高齢猫になったマオくん/長谷川動物病院

 

こんにちは、院長の長谷川です。

 

 

福井県に『御誕生寺(ごたんじょうじ)』というお寺があります。

 

その福井の『ねこ寺』は、先代の住職が大の猫好きで、その頃から捨て猫の保護に取り組まれてきたそうです。

 

けれど現在は、適正飼育を行うために、新規の猫の受け入れはされていないそう。きちんと飼うためには、限度というものがありますからね。😉

 

それでも結構な数の猫たちがいて、中には子猫の姿も。

 

お寺の境内で自由に暮らす猫たちを目当てに、遠方からも多くの人が訪れている

ようです。

 

少なくない数の人が『推し』の猫ちゃんを目当てに、そのお寺に通ってきているとのこと。

 

その人たちは、『推し』の猫たちにどこかご自身を投影されていて、だから、その猫ちゃんが気になってしまう。

 

猫たちの生き方から、ご自分に当てはめて学ぶことがあるのかもしれませんね。

 

先代住職が望んで意図していらしたのかは分かりませんが、結果として、猫たちはいい仕事をしているなと思いました。😊

 

お経よりも、ありがたい説法よりも、人の心に届いて、その人の心を救ってくれる。

 

猫たちは天使ですね。宗教は違いますが💦 悩みを抱えた人の心が晴れるのならば、それはそれで結果オーライ。

 

今は亡き先代の住職も、きっと喜んでいることでしょう。

 

新潟と同じく雪深い福井の地で、風邪などひかぬように元気に穏やかに過ごしてほしいと願います。🥺

 

 

 

ところで、「飼っていた猫が亡くなって寂しいけれど、もうこの歳だから猫は飼えない」。

 

時々、中高年の方が同じお話をされるのを聞き、寂しく残念に思っています。

 

 

犬での報告ですが、ペット犬と触れ合うことによる高齢者への様々なメリットが報告されています。

 

●社会性の向上(周囲の人との関わり、活動量、発言、笑顔、動物への関心などが増える)が見られた

●唾液中の『幸せホルモン』オキシトシンが平均135%増加して、喜びがもたらされていると実証された

●ペットの飼育経験があり、接触や愛着度が高い高齢者は、手段的日常生活動作障害を持つ割合が、相対的に低かった

●犬を飼育することは、飼育者の体の各数値の改善、通院の減少に強く関連している  など。

 

犬を飼うことで、必要に迫られて飼い主が体を動かし、他の人とコミュニケーションをとることで精神的にも肉体的にも活動的になり、またペットの方も、そんな生き生きした飼い主を見ていて幸せを感じるのでしょう。

 

高齢者にとっては、ペットが生活の支えになり、幸せを感じて心が満たされ、生きがいのある生活を送ることができるのでしょうね。

 

またドイツやオーストラリアでは、高齢者の医療費削減の効果も算出されているそうです。

 

こんなふうに、高齢者が自ら望んでペット(犬に限らず)を飼育することは、精神的、肉体的、認知症予防の観点からも、いいことずくめのようです。

 

 

その一方で、高齢者自身の体力や健康面の問題から、飼育を継続することが困難になるケースが存在することも、また事実です。

 

私自身も、認知症になった飼い主に食事を与えられずにガリガリに痩せて立てなくなった猫や、飼い主の死亡後に遺族によって置き去りにされた猫などを診察した経験があります。

 

高齢の飼い主による多頭飼育崩壊も問題になっています。その多くは、社会との接点の少ない一人暮らしの高齢者です。

 

動物を飼い始めたら、飼い主には最後まで愛情を持って世話をする『終生飼養』の責任があり、そのために多くの方が新たな飼育を諦めていらっしゃいます。

 

とても残念なことだと思います。

 

 

先日、ある飼い主様から質問されました。「この子達を置いて私は先に死ねないけれど、もしもそうなった時のために、できることはありますか?」

 

この問題は、どなたにも当てはまることです。いつどうなるかなんて、誰にも先のことは分かりませんからね。😔

 

動物好きの優しいご親族がいらっしゃるなら話は別ですが、動物アレルギーなどの様々な事情があって、引き取れない場合もあります。

 

 

ご自身の不測の事態に備え、残された動物が生涯安心して暮らせるように、以下のことをあらかじめ準備しておくことが大切だと思います。

 

●一時預かり、または新たな飼い主の確保・・・信頼できる親族、友人、民間事業者など

●ペットに関するメモを作成・・・性格、投薬中のお薬、病気の症状、好物、注意事項など

●預ける(託す)ための準備・・・フード、生活用品、衛生用品、定期的なワクチン接種、寄生虫駆除剤投与など

●ペットへの遺言状の作成・・・あらかじめ承諾を得たペットの託し先、ペットへの財産など、『死因贈与契約書』の締結を含めた法的に有効な遺言書を作成

 

 

現在、いろいろな民間サービスが提供されているようです。

◆老犬・老猫ホーム

◆ペット同居型サービス付き高齢者住宅

◆ペット信託

 

ペット信託は、現金やペットを信託財産として、飼育者が亡くなった際のペットの世話をするサービスです。

 

ペットを一生お預かりするサービスも同様ですが、信用できる人であるか、見極めることが重要であると思われます。

 

 

最後に、ご自身で飼うことが難しい方には、ペットのお世話が困難な方のお手伝いをするボランティア活動などがあればいいなと思っています。

 

出産や育児、介護などで、お世話が大変だとお話しされる方がいらっしゃいますからね。お散歩だけでも助かるのでないでしょうか。

 

動物愛護センターの動物の短期ホームステイなども行えたらいいなと思います。

 

いろいろクリアしなければならない点はあると思いますが、実現できたらいいですね。😊

 

 

以上、ここまで読んでいただきまして、本当にありがとうございました。😆

 

動物たちの安心な老後のために、参考にしていただけましたら幸いです。😊