食べ物が美味しい季節、食欲の秋ですね。😋
体が脂肪を蓄えようとするので、体重の増加に御用心。😆
肥満とは、体脂肪が過剰に蓄積した状態で、犬や猫では最も一般的な栄養性疾患です。
そう、『肥満』は歴とした病気なのです。
あまり認識されてはいませんが。。
ぽっちゃりしていて、一見『カワイイ💕』のですが、骨や関節、心臓に負担がかかったり、インスリンの働きが悪くなるせいで糖尿病になったり、高血圧や高脂血症の原因となったり。🥺
適正体重の犬に比べて、肥満犬は寿命が短いことが報告されています。🥲
今回は、肥満が身体に及ぼす影響についてのお話です。
肥満になる原因によって、肥満は分類されます。
①単純性肥満:過剰な食事、生活習慣、飼育環境、運動不足、遺伝的要因
②症候性肥満:中性化手術(避妊、去勢)、甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症、下垂体機能低下症、先端巨大症、インスリノーマ、
③薬剤性肥満:ステロイド剤、抗てんかん薬(フェノバルビタール)、黄体ホルモン剤などの長期投与や高用量投与
以前、肥満になると増加する脂肪細胞(白色脂肪細胞)は、空腹(飢餓)時に脂肪酸やグリセロールを放出するための貯蔵庫であると考えられていました。
けれど現在、脂肪細胞はアディポカインと総称されるさまざまなホルモンを分泌して、脳や身体中の抹消組織と連携する内分泌器官の1つであるとされています。
アディポカインは、食欲とエネルギーバランス、血糖値の調節、インスリン抵抗性、止血、体液バランス、炎症と免疫、血管機能、血管新生など、身体の機能へ多くの影響を及ぼし、肥満に起因する疾患の病態や発症に関与していることがわかっています。
肥満になると体内でアディポカインの分泌が増加して良くない状況を招きます。
犬と猫の肥満はいろいろな病気を発症させたり、より悪化させることが明らかになっています。
肥満が影響を及ぼす疾患
●内分泌・代謝性疾患
①糖尿病:猫の肥満はヒトの2型糖尿病に類似した糖尿病の主要な危険因子です
②甲状腺機能低下症:犬の肥満の原因になります(逆に肥満による影響はない)
③高脂血症:肥満犬ではコレステロール、トリグリセリド(中性脂肪)、リン脂質が増加し、高トリグリセリド血症はインスリン抵抗性と関連性があります
また肥満は、犬の急性膵炎のリスクファクターです
⭐️シェルティは原発性高コレステロール血症の特定犬種で、甲状腺機能低下症が併発した場合には重度の高LDL血症が起こり、犬では一般的でない粥状動脈硬化症を発症する可能性があって注意が必要です
④肝リピドーシス:肥満体の猫が食欲不振から栄養不良になることで発症します
●整形外科疾患
過剰な体重負荷によって、上腕骨頭骨折、前十字靭帯断裂、椎間板疾患、変形性膝関節症などが引き起こされ、中性化による肥満は股関節形成異常と関連があります。
アディポカイン(レプチンやアディポネクチン)は関節滑液中に含まれていて、レプチンは炎症性サイトカインが軟骨細胞に及ぼす影響を増加させるため、肥満によって関節内のアディポカインが増えると、変形性関節症が引き起こされやすくなります。
●呼吸器疾患
肥満は、特に小型犬の気管虚脱の重要な危険因子であり、犬の熱中症、喉頭麻痺、短頭種気道症候群の悪化因子です。
さらに過度な呼吸や呼吸回数の増加によって、気道炎症や気道過敏症を助長します。気道過敏症はレプチンの増加によっても助長されます。
●循環器疾患
肥満は、心調律、左心室容積増加、高血圧、血液(血漿)量の増加に影響し、門脈静脈血栓症や心筋低酸素症に関係します。
猫の肥満は肥大型心筋症の発症要因となりますので、特に遺伝的素因のある子は注意が必要です。
肥満は炎症細胞や炎症性メディエーターとの相互作用によって肺循環に影響を及ぼし、肺高血圧症の危険因子となります。
●泌尿器疾患・繁殖障害
肥満は、腎臓(糸球体)障害の悪化要因となる可能性があり、シュウ酸カルシウム尿症や結石の発症要因となります。
また尿道括約筋機能不全との関連があり、難産を招きやすいです。
●がん
犬では肥満と乳腺腫瘍、膀胱の移行上皮癌の発生との関連性が指摘されています。
肥満による①レプチン濃度の増加、②アディポネクチン濃度の低下、③高インスリン血症が、がんの発生に関与していると報告されています。
●その他
肥満犬では皮膚疾患になりやすく、免疫機能が低下して感染に対する抵抗力が低いことが報告されています。
また肥満は、呼吸障害や循環器障害によって麻酔リスクを高め、麻酔時の合併症の危険があります。
肥満の解消は、単純に食事の量を減らせば良いというものではありません。
基礎疾患があればその治療と並行して、十分に時間をかけて、適切な療法食により計画的に行う必要があります。
特に猫では、急激な減量は肝リピドーシスを発症する可能性があり危険です。
肥満と指摘された子は、病気の予防のため、そしてこれからも一緒に元気で暮らせるように、病院スタッフ指導のもとでの減量プログラムをお勧めします。ご相談ください。
以上、動物たちの健康管理のご参考にしていただけましたら幸いです。😊
※時々お問い合わせをいただくのですが、診察を伴わない個々のご質問にはお答え致しかねます。申し訳ありません。