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心エコー検査

 

超音波とは、人間が聴くことができない高い周波数の振動波(音波)のことです。

 

超音波検査では、エコープローブから超音波を送り、反射した音波(エコー信号)の情報をコンピューターが処理した画像をもとに診断を行います。

 

超音波の伝わる速さは、空気、水分、脂肪、臓器、筋肉、骨によって異なり、その違いが映像として画面に映し出されます。

 

低い周波数では遠くの場所まで届きますが、詳しい綺麗な画像は得られません。

 

反対に、高い周波数では綺麗な画像が得られますが、遠くまでは届きません。

 

なので、低周波数の大型犬よりは、高周波数のプローブが使用される小型犬や猫の方が、一般的に画質が綺麗です。

 

また、に囲まれた脊髄空気を含むの検査には向きません。(最近は肺エコー検査も行われていますが。。)

 

 

 ●得意なところ

1.レントゲンではわからない胆嚢や副腎や膵臓、妊娠初期の胎児などを確認できる

2.臓器の内部の様子を知ることができる

3.胸水や腹水などの、体内の水分貯留の有無を知ることができる(水分か血液かはわからない)

4.心臓内の弁の動きや血液の流れをリアルタイムで可視化できる

 

●苦手なところ

1.骨と空気(超音波を完全に反射するので、その先の組織が描出されない)

2.レントゲンと違い、検査が一瞬で終わらない

3.大型犬や肥満犬の描出(目的臓器とプローブとの距離が遠い)

4.じっとしていない(非協力的な)動物

 

●準備

1.絶食と絶飲:腹部検査の時に、消化管内の空気(ガス)を最小限にするため

2.毛刈り:空気を追い出し、プローブを皮膚に密着させるため

3.(必要で可能ならば)鎮静や麻酔処置

 

●目的

1.心臓検査(+肺エコー検査)

2.腹部検査

3.バイオプシー検査補助

 

 

心エコー検査では、心臓の断面をリアルタイムで観察することによって、病態の評価を行います。

 

心疾患の進行に伴って、心臓には形態の変化が生じてきます。(心リモデリング)

 

心臓にある4つの部屋(左右の心房心室)が拡張したり肥大したり、心筋や弁尖や腱索などの組織の変性が起きるのです。

 

その形態変化は病態に応じて起こり、心臓に加わる負荷は、容量負荷(前負荷)圧負荷(後負荷)に大別されます。

 

容量負荷が加わると、心臓の内腔(心房・心室)が拡張し、圧負荷が加わると心筋壁が肥厚します。

 

大量の血液でパンパンになった心臓は、拡張や収縮を繰り返すことが難しくて、それでも頑張って収縮するためにマッチョになるという感じでしょうか?😅

 

 

僧帽弁逆流(MR)では、弁尖腱索乳頭筋の基質的異常に伴うMRを、器質性MR、左心房や左心室の拡大や機能不全に伴う2次的なMRを、機能性MRといいます。

 

犬では、加齢に伴う弁尖や腱索の粘液種様変性による器質性MRが多く、変性性MRとも呼ばれています。

 

僧帽弁逆流が進行してくると、左心室からの逆流血液とその内圧によって、左心室と左心房の拡大が起こります。(ステージB1、B2)

 

左心房拡大の評価は、主観的な評価とともに、ほぼ大きさの変わらない大動脈径との比較で行われます。(LA/Ao)

 

ちなみに、LA/Aoの値が 1.0〜1.3が経度拡大、1.3〜1.5が中等度拡大、1.5〜2が重度拡大、2以上が超重度拡大と評価されますが、これはあくまで目安です。

 

 

エコーによる心臓の評価は、一般的に6つの基本断面を描出することによって行われます。

 

動物を右下横向きに寝かせて右側からプローブを当てる、①長軸四腔断面、②左室流出路断面、③左室短軸断面、④心基部短軸断面と、左下横向き左側からの、⑤心尖部四腔断面、⑥心尖部五腔断面です。

 

本来ならば、リアルタイムで飼い主様に説明をしながら行いたいところですが、動物の場合は時間との勝負です。

 

できるだけ短時間に、できるだけ多くの画像を保存しておき、後から計測や評価を行います。

 

それらをもとに、飼い主様への説明を行います。

 

心疾患であることがわかっている子たちは、定期的なこれらの画像やドプラー法による血流速の測定によって、病態の評価を行うことが理想です。

 

けれどシャイな犬猫など、非協力的な動物ではなかなか難しい。。😩

 

もともと心臓の悪い子を、無理な保定によって危険な状態にはできません。でも一方で、治療のためにもエコーの情報は欲しいところです。☹️

 

 

ポイントオブケア心エコー(ちょい当て心エコー)は、猫の心筋症などの無症状の心疾患を見つけるために推奨される、簡略化された(ポイントを絞った)検査法です。

 

猫の場合、描出する断面は基本、左室短軸断面(乳頭筋レベル)心基部短軸断面の2つだけです。(+肺エコー検査)

 

心臓の形態病変の有無の確認、あれば心臓の左心房拡大の有無や、心臓の収縮能力の評価を行うための、簡易的な迅速検査です。

 

毛刈りは行わず無麻酔で、横臥位でなくても立位や腹臥位でもOK、短時間で必要な画像が得られれば終了です。

 

綺麗な画像は求めません。知りたいことがわかれば良いのです。😊

 

心臓の形態異常の発見、さらには左心房の拡大の程度によるステージング(犬も猫も治療が推奨されるステージB2であるかどうか)の診断や、心臓の収縮力(FS)の評価に有用な検査です。

 

私たちの病院では、特に早期発見が難しい猫の心筋症を見つけるための検査として、お勧めしています。

 

ワクチン接種時に、同時に気軽に受けていただけるような料金設定を設けています。

 

詳しくは直接にお問合せくださいませ。