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FIVの検査と治療

 

猫の3大ウイルス感染症の1つ、『ネコエイズ』は、猫免疫不全ウイルス(FIV)の感染による伝染病です。

 

けれど、感染した全ての猫がエイズの状態になるわけではなく、無症状のまま寿命を全うする猫も多く存在します。

 

なので、『FIV陽性』とは、決して死刑宣告や死亡予告を意味するものではありません

 

感染した母猫からの垂直感染や舐め合いによる感染もあり得ますが、猫白血病ウイルス(FeLV)とは違って可能性は低いです。

 

FIVはもともと乾燥に弱く、体の外に出ると失活してしまうからです。

 

ウイルスは、感染猫の唾液や血液中に高濃度に含まれていますので、感染経路はほぼ喧嘩による咬傷です。

 

なので、子猫や保護猫を新たに飼い始めた時、特に多頭飼育の場合は、早めに感染の有無を確認することをお勧めします。

 

FIVに感染していても、無症状なFIVキャリアーの猫がいるからです。

※無症状でも体内のウイルス量が多い場合には、エイズ発症の危険性があります

 

 

FIVで行われている検査

抗体検査(定性検査)

血液検査で感染の有無を確認します。

院内検査キットと、外注検査での定性検査が利用可能です。

新たに猫を飼育するとき、咬傷歴などにより感染が疑われるとき、口内炎などの難治性の慢性疾患があるとき、外科手術の術前検査などで推奨されます。

子猫では生後6ヶ月以降の、咬傷後は1〜2ヶ月以降での検査が推奨されます。

ただし、プロウイルス遺伝子検査では移行抗体の影響を受けないため、子猫の天然株の感染の有無を正確に判定できますので、検査を急がれる時にはお勧めです。

 

定量検査

FIVの病期の進行と血液中のウイルス量には、相関があるとされています。

血液中のFIVのウイルス量測定によって、エイズの発症や予後予測を行います。

ただし、無症候期の個体であっても基準値を超えたり、超えないまでも高い値が検出される場合もあり、この検査のみから発症の有無などを断定するのは困難です。

 

 

 

サブタイプ分類

日本で検出されるFIVは、A、B、C、D1、D2の5つのサブタイプに分類され、地域によって蔓延しているサブタイプが異なることがわかっています。

 

FIVに感染してもエイズの発症に至らない症例が数多く存在し、発症するのか否かは感染したFIVのサブタイプによると言われています。

 

他のサブタイプに比べて、Bは病原性が低くエイズに至る可能性が低いと考えられています。

 

 

 

【治療】

①原因治療(抗ウイルス療法)

感染してしまうと、体内からウイルスを排除すること(根治)は不可能です。

抗ウイルス薬は、副作用の問題もあり現実的ではありません。

感染阻止の目的で、咬傷後早期にインターフェロン(ω)の投与が行われる場合があります。(効能外使用)

 

②対症療法

口内炎や感染症など、それぞれの原因や症状に応じた治療を行います。

 

 

 

【予防】

FIVワクチンは、現在発売中止となっています。

確実な予防法は外出をさせないなど、他の猫との接触を避けることです。

 

FIVの悪化を招く猫白血病ウイルスなどのさらなる感染症を予防し、またFIVの他の猫への感染を防ぐために、室内飼育は必須です。

 

そのため、避妊・去勢手術が推奨されます。

 

多頭飼育の場合は、感染猫だけの隔離飼育が推奨されます。

 

けれど、無症候キャリアーであり定量検査でウイルス量が少ないことがわかっているならば、仲の良い他の猫との共同生活も可能であると思われます。

 

このウイルスの感染力は弱いので、食器や飲水の共有、舐め合いくらいでは感染する可能性はとても低いからです。

 

とはいえ決してゼロではありませんので、食器やトイレは清潔に保ち定期的に乾燥させることが推奨されます。

 

そしてエイズを疑わせる症状が認められるようになったなら、すぐに隔離を行い確認の検査をお勧めします。

 

 

目標は、『二次感染とエイズの発症を防いで、健康な状態を維持する』です。

 

 

感染していても無症状の場合は、できるだけストレスのない生活を心がけ、感染していない猫と変わらない一生を送らせてあげたいですね。

 

 

※時々お問い合わせをいただくのですが、診察を伴わない個々のご質問にはお答え致しかねます。申し訳ありません。