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猫の甲状腺機能亢進症

猫の甲状腺機能亢進症/長谷川動物病院
甲状腺機能亢進症のみゅうちゃん/長谷川動物病院

 

明けましておめでとうございます。😊

 

今年は寒いですが、私の住む新潟市西区では降雪が少なく雪除けの必要がなくて助かっています。

 

このまま春まで、降らないでいてほしい。😫

 

 

今回は、猫ちゃんに多い甲状腺機能亢進症のお話です。

 

甲状腺機能亢進症は、慢性腎臓病と並んで、高齢の猫ちゃんに多い病気です。

 

ちなみに猫ちゃんは、甲状腺機能低下症になることはほとんどなくて、逆にワンちゃんは、甲状腺機能低下症が多いです。

 

 

甲状腺は、喉の少し下の辺りの気管の左右に1つずつ、ゆるくくっついている内分泌(ホルモン)器官です。

 

甲状腺ホルモンを分泌していて、機能亢進症では、全身の代謝が活発になりすぎた状態になっています。

 

エネルギーを無駄に浪費し続けていて、猫ちゃんは疲れ切っていると理解してください。

 

典型的な症状の子は、じっとしていても体は全力疾走をしているような状態になっていて、そのままでは全身への負担(特に心臓)がとても大きいのです。

 

また、興奮しやすく、呼吸が速く、血色が良くて元気そうだったりします。

 

なので初期の頃は、飼い主さまは病気の認識がなく、体重の減少以外は、むしろ『健康で元気』と思っている方もいらっしゃいます。

 

けれど、甲状腺機能亢進症を放置すると、徐々に全身の臓器がダメージを受けます。だって、かなり無理がかかっていますから。

 

特に、高血圧による障害を受けやすい心臓や血管、腎臓、目、脳などです。

 

常に心臓がバクバク、呼吸が速かったら、熟睡もゆっくり休むこともできないでしょうね。🥺

 

なので、なるべく早い段階で病気を見つけて治療を開始して、猫ちゃんの体の負担を和らげて、早く楽にしてあげたいところです。

 

まずは、こんな病気があるということを、猫の飼い主の皆さまに知っておいていただきたいです。

 

 

ちなみに、人間の『バセドウ病』は同じ甲状腺機能亢進症なので、症状は同じです。

 

けれど、こちらは免疫の病気ですので、猫の甲状腺機能亢進症とは病態が異なり、厳密にはイコールではありません

 

症状が同じなので、つい引き合いに出してしまいますが💦 『バセドウ病』っていうと、実際、理解してもらいやすいのです。😅

 

甲状腺機能亢進症って、名前が堅苦しいですからね。😩

 

 

理由はまだよくわかっていませんが、猫は高齢になると甲状腺が腫大しやすいようです。

 

ほとんどは『過形成』と言って、細胞の数が増えて大きくなるだけなのですが、良性腫瘍や、悪性腫瘍ができている場合もあります。

 

けれど、悪性腫瘍でも猫の甲状腺腫瘍は、周囲組織への侵潤や転移を起こしにくく、外科切除できれば根治可能であると言われています。

 

 

主な症状

・食欲亢進+体重減少

・多飲多尿

・行動の変化(活発に動く、怒りっぽい、猫なのにパンティング呼吸、異常な鳴き声など)

・下痢、嘔吐、食欲低下、元気消失、心雑音、毛艶が悪くなる、など

 

『元気で食欲旺盛だけど痩せてきた』という典型的な症状ではなく、場合によっては、元気や食欲がなかったり、下痢や嘔吐が主症状の子もいますので、注意が必要です。

 

 

診断

触診と血液検査によって行われます。

 

正常な甲状腺は触診で確認できませんし、腫大しても胸部の前縦隔に甲状腺が入り込んでしまうと触診ができません。

 

また典型的な症状がなくても、一般的な血液検査で肝臓の数値(ALT、ALP)が高い時には、追加で甲状腺ホルモン(T4)の検査を行うことが推奨されます。

 

上記のような症状は、高齢の猫に多い他の病気(腎臓病、糖尿病、膵炎、消化器病、リンパ腫など)の可能性もありますので、高齢(7歳以上)になったら、定期的な血液検査をお勧めします。

 

また、2次疾患として心臓拡大(肥大型心筋症とは異なるが区別は難しい)が認められることがあり、レントゲンや超音波検査で病態の確認が必要な場合があります。

 

 

治療

①外科切除

②内科療法

③療法食

④併発疾患の治療(高血圧、頻脈、心臓拡大、腎臓病など)

 

治療の目的は、過剰な甲状腺ホルモンを正常に戻し、全身状態を改善させることです。

 

なので根治的な治療は、腫大した甲状腺(片則または両側)の外科切除です。

 

けれど、前縦隔にある甲状腺腫瘍や、高齢で併発疾患を抱えていたりして手術の実施が難しいと判断される場合には、内科療法が行われます。

 

内科療法は、甲状腺ホルモンの合成を抑制するお薬の投与です。

 

治すお薬ではないので、効果を維持するためには生涯の投薬が必要です。

 

投薬開始から効果が出るまでに、1~3週間程度かかりますので、それまでの間、ステロイド剤を併用投与することもあります。

 

高血圧が著しい場合は、β遮断薬などの降圧剤を投与する場合もあります。

 

投薬により甲状腺ホルモンの効果が抑制されると、それまで隠されていた腎臓病が顕在化することがあり、注意が必要です。

 

軽度の亢進症の場合は、療法食の給餌のみで症状の改善が可能である場合もあります。

 

 

 

 

以上、動物たちの健康管理のご参考にしていただけましたら幸いです。😊

 

 

※時々お問い合わせをいただくのですが、診察を伴わない個々のご質問にはお答え致しかねます。申し訳ありません。