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胆嚢の病気

胆嚢の病気/長谷川動物病院
  胆嚢と総胆管/日本消化器外科学会HPより

 

胆嚢は、消化液である胆汁を一時的に貯蔵して濃縮する消化器官です。

 

胆汁は肝臓の肝細胞で作られ、肝臓内の毛細胆管→小葉間胆管→集合胆管→肝管と流れます。

 

肝管と、胆嚢から続く胆嚢管が合流して総胆管となり、膵臓の主膵管に近い、十二指腸の大十二指腸乳頭という開口部に続きます。

 

犬では総胆管と主膵管は別々に開口しますが、猫では総胆管と主膵管が膵胆管膨大部で合流して、十二指腸に開口しています。

 

そんな違いはあるものの、総胆管と膵臓や膵管はとても近いので、それらの炎症や腫瘍性疾患は総胆管に影響を及ぼし、胆汁の流れを悪くしたり完全に止めてしまう可能性があります。

 

 

胆汁には胆汁酸塩、胆汁粘液や色素(ビリルビン)、コレステロールなどが含まれています。

 

食べたものが十二指腸を通過するタイミングで、胆嚢が収縮して内部に貯蔵されていた胆汁が十二指腸内に分泌されます。

 

同時に、膵臓からの膵液や小腸粘膜からの腸液が加えられて、消化吸収が促進されます。

 

胆管には弁がないので胆汁の流れは相互通行で、胆嚢が収縮して胆汁を排出した後は、肝管からの胆汁を取り込み、貯蔵・濃縮を行います。

 

胆嚢内に移動した胆汁は、そこで水分が吸収されて、5〜10倍に濃縮されます。

 

胆嚢の頸部には粘液分泌腺が存在し、粘液を分泌して胆嚢内部や胆管内部の保護を行っています。

 

胆汁は元々、水分の多いサラサラの液体ですが、胆泥(ドロドロ)や胆石(結石)ができたり、ゼリー状の粘液が胆嚢内に貯留する(粘液嚢腫)ことがあります。

 

なぜこのような変化が起きるのか、どのようなメカニズムで起きるのか、どのくらいの時間をかけて起きるのか、残念ながらまだ正確にはわかっていません。

 

けれど、胆石症は細菌感染が、胆嚢粘液嚢腫は甲状腺機能低下症副腎皮質機能亢進症が関与していることが指摘されています。

 

今回は、主な胆嚢の病気についてのお話です。

 

胆嚢の病気は、悪化すると命の危険を伴うものが多いので、定期検診(画像診断)によって、元気なうちに早期発見・早期治療を行うことが望ましいです。

 

 

●共通する主な症状

元気・食欲の低下、嘔吐、下痢、脱水、腹痛(上腹部)、動きたがらない、黄疸、発熱、胆汁性腹膜炎など 重症例ではDICや多臓器不全

 

●好発犬種

シェルティ、ミニチュアシュナウザー、コッカースパニエル、ビーグル、シーズー、トイプードルなど

 

●発症要因

脂質代謝異常症(高脂血症)、内分泌疾患(甲状腺機能低下症副腎皮質機能亢進症

 

●診断:画像診断(超音波検査、レントゲン検査)、血液検査

 

●治療:内科的治療(投薬)、外科的治療(胆嚢摘出など)、食事療法

 

 

胆嚢炎

肝臓や膵臓、消化管からの細菌感染によって起きることが殆どです。

胆嚢だけでなく、総胆管や肝内胆管にまで炎症が波及することもあり、胆汁鬱滞(流れなくなる)によって黄疸になることもあります。

ごく稀に、非感染性のリンパ球形質細胞性濾胞性胆嚢炎という病気もあります。

胆嚢炎によって胆汁が変性して、胆泥症、胆石症、胆嚢粘液嚢腫の原因になる可能性があります。

 

 

胆泥症

胆汁が泥のようにドロドロになっている状態です。

なので胆汁の流れが悪くなっています。

ほぼ無症状ですが、投薬と食事療法で経過観察が望ましいです。

 

 

胆石症

肝臓内の胆管、胆嚢、総胆管のどこかで結石が認められます。

胆管の完全閉塞が起きると黄疸が認められます。

発見が遅れ重症化すると、胆嚢炎や胆嚢破裂を引き起こすことがあります。

なので、早期の外科的摘出が望ましいです。

動物の胆石はカルシウム結石が多く、レントゲン検査で確認が可能です。

ちなみに通常では、胆汁は肝細胞で生成された時にはアルカリ性ですが、胆嚢で貯蔵・濃縮されると中性に近くなり、炭酸カルシウム(結石)が溶解されやすくなっています。

なので、結石ができるということは、胆汁がアルカリ性のまま(溶解されにくい状況)なのでしょう。

 

胆嚢粘液嚢腫

原因は不明ですが、胆汁粘液の過剰な分泌が起こり、ゼラチン様の粘液が胆嚢内に溜まって胆嚢が拡張している状態です。

中高齢の犬で発生が多く、胆汁は流動性がなくなり、胆嚢内に大量に貯留すると正常な胆汁の入る場所がなくなります。

さらに胆嚢内圧が上昇すると、胆嚢壁の血流障害が起こり、壊死や胆嚢破裂(胆汁漏出)が引き起こされます。

また胆石のように、ゼラチン様の粘液が肝管や総胆管を閉塞させると、黄疸や胆嚢炎、胆道系の壊死・胆汁漏出(胆汁性腹膜炎)を引き起こします。

早期診断と早期の外科手術が望まれます。

 

 

以上、ここまで読んでいただきましてありがとうございました。

 

 

動物たちの健康管理の参考にしていただけましたら幸いです。😊

 

 

 

🌼あわせてお読みください:診療ITEMS/胆嚢疾患の治療

 

 

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