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ショック

ショック/長谷川動物病院
ガーーーン!!  ショック / 長谷川動物病院

 

先日、作曲家のすぎやまこういちさんが、お亡くなりになりました。

 

私はハマるのが怖くて、😅 ゲームには手を出しませんが、オリンピックの開会式で演奏されたドラクエのテーマ曲は、流石に聴き慣れた音楽でした。

 

謹んでお悔やみ申し上げます。

 

 

死因は、敗血症性ショックということでした。

 

 

この『ショック』という言葉。一般的には、『ガーン⤵️😱』っていうイメージでしょうか?

 

私も普通の会話では、そんなふうに使っています。😆

 

けれど、(獣)医学用語としての『ショック』は、全く違います。

 

だって、そのために人(動物)が亡くなってしまうのですから。☹️

 

ガーン⤵️😱』は、精神的ストレスを受けた人が感じる感情ですね。

 

なので、ガンでは亡くなりますが、『ガーン⤵️😱』では、普通、ヒトや動物が亡くなることはありません。 まぁ、特別心臓の悪い人なら、亡くなるかもしれませんが。。🤔

 

 

今回は、普段、診察室で説明をするときに、飼い主様との間に認識のズレを感じる、『ショック』についてのお話です。🙂

 

 

『ショック』は前回のDICと同様に、死亡原因となり得る重篤な病態で、直ちに緊急治療が必要な危険な状態です。

 

(獣)医学用語としての『ショック』とは、何らかの原因によって、全身の血液の流れが極端に悪くなる、急性の循環不全症候群です。

 

その本質は、死につながるような急激な血圧低下です。(明らかな血圧低下を認めないこともあります)

 

そのため、必要な酸素が供給されなくなった組織の細胞が死に、全身の臓器の機能障害が起こります。

 

無治療の場合や治療が奏功しなければ、生命維持に不可欠な重要臓器(脳、肺、腎臓、肝臓、心臓など)が機能不全に陥ることによって、死に至ります。

 

コロナ禍の外出自粛によって人流が抑制され、行政の支援制度がなければ、多くのお店や企業が閉店・倒産を余儀なくされる、そんなイメージでしょうか?

 

そんな、危機的な状態です。

 

多臓器不全症候群は、あらゆる型のショックに続発する可能性がありますが、特に敗血症性ショックで多発します。

 

 

 

病態による分類

 

循環血液量減少性ショック:出血、脱水、腹膜炎、熱傷、未治療の糖尿病など

  ⚫︎全身の血管内の血液量の極端な減少や、血液以外の体液の大量喪失による

 

血液分布異常性ショック:アナフィラキシー、敗血症、重度の脊髄損傷や脳ヘルニアによる交感神経遮断(神経原性ショック)、アジソン病など

  ⚫︎血管が拡張しすぎて、相対的に循環血液量が不足し十分に流れない

 

心原性ショック:心筋梗塞、弁膜症、重症不整脈、心筋症、心筋炎など

  ⚫︎心臓が血液を循環させるためのポンプ機能の低下による 

 

心外閉塞・拘束性ショック:肺塞栓、心タンポナーデ、緊張性気胸など

  ⚫︎心臓のポンプ機能障害や血管を閉塞させる物理的因子の存在による 

 

それらの結果、ショックの本質的な原因である急激な血圧低下が引き起こされます。

 

 

すぎやまさんの死因である敗血症性ショックでは、細菌毒素、特に内毒素(エンドトキシン)の作用によって、炎症反応が促進されやすくなります。

 

その結果、炎症性メディエーター(サイトカイン、ロイコトリエンなど)によって微小血管の透過性が亢進し、体液や血漿タンパク質が血管内から血管の周りの間質腔へ漏れ出しやすくなります。肺水腫や、胸水腹水などですね。

 

さらに血液凝固システムが活性化され、DICが発生しやすくなります。

 

また消化管では、透過性が亢進することによって腸内細菌が消化管腔内から管外の腹腔へ移動して、敗血症や腹腔内臓器や腹膜への転移性感染症をきたす場合があります。

 

 

症状

虚脱、眠気(意識混濁)、精神異常(錯乱)、低血圧、頻脈、呼吸速迫、チアノーゼ、乏尿など。 

 

ただし、代償反応としての交感神経系の賦活によって、聴診すると心拍動が強くなることがあり、ショックの初期段階では低血圧ではない場合もあります。

 

ショックでは、一般的に皮膚は冷たく湿っぽく感じられます。cold shock

 

血液分布異常性ショックでは、例外的に皮膚は暖かいか赤みを帯びていることがあり(warm shock敗血症性ショックでは発熱が、アナフィラキシーショックでは蕁麻疹や喘息の症状が認められる場合があります。

 

その他、基礎疾患や続発する臓器不全による症状が認められます。

 

 

治療:酸素吸入、静脈点滴、輸血、ショックの種類や原因に応じた治療、(昇圧剤投与)など。

 

 

予後は、ショックの原因や重症度、年齢、体力、持病、合併症、治療開始までの経過時間、治療内容などによって変わってきます。

 

残念ながらショックの死亡率は、特に、心原性ショックや敗血症性ショックの死亡率は、とても高いです。

 

 

 

 

以上、ここまで読んでいただきましてありがとうございました。

 

 

動物たちの健康管理の参考にしていただけましたら幸いです。😊

 

 

※時々お問い合わせをいただくのですが、診察を伴わない個々のご質問にはお答え致しかねます。申し訳ありません。