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命を守るための選択と行動

命を守るための選択と行動/長谷川動物病院
スタッフニャンコのマオくん / 長谷川動物病院

 

先日、衝撃的な映像を見ました。

 

「助けられなくてごめん…」 コロナ感染後に合併症発症、受け入れ拒否で翌日入院も…死亡 自宅療養の現実

 

コロナウイルスに感染した糖尿病患者の男性を、医師が往診したときの映像でした。

 

その患者さんは、Ⅰ型糖尿病でインスリンの注射が必要な方だったのですが、食欲がなかったのでしばらく(ご自分の判断で)インスリンを投与していなかったということでした。

 

そのため往診した医師が診察した時には、糖尿病性ケトアシドーシスという、すぐに専門の病院での、緊急の治療が必要な状態になっていました。

 

その医師は、すぐに受け入れ可能な病院を探しますが、コロナ陽性ということもあって見つかりません。一般病院でも無理でした。

 

なので保健所に連絡をすると、なんとか受け入れてもらえる病院が見つかりました。

 

けれど、患者さんの一般状態があまりに悪かったために、その病院でも結局受け入れてもらえず。

 

それでも保健所の方の尽力のおかげで、翌日別の病院に入院できたのですが、残念ながら患者さんは亡くなられたそうです。

 

 

ご冥福をお祈りいたします。同時に保健所の職員の方々、現場の医療スタッフの皆様のご苦労とその苦悩が偲ばれます。

 

医療スタッフならば、誰だって患者さんをお断りなどしたくないはずです。

 

それでも、そうしなければならない状況に追い込まれているというこの現実。

 

この映像は、どんな専門家のお話よりも説得力のあるものでした。こんなことが現実に起きているのですね。

 

 

この患者さんの詳しい情報は示されておりませんでしたので、ワクチン接種の有無などは分かりません。

 

ここからは私の推測です。もしも事実に反していることがありましたら、お詫び致します。

 

医療現場が逼迫しているこの時期でなければ、コロナウイルスに感染していなければ、食欲がなくなるほど容態が悪化しなければ、おそらくこの患者さんが亡くなることはなかったのではないでしょうか。

 

まず感じたことは、この患者さんはもともとワクチンを接種できないような病態だったのかなということでした。

 

糖尿病患者さんは、このような事態になってしまうことがあらかじめ予想されますので、ワクチンの優先接種の順位の筆頭に挙げられています。

 

なので、積極的に接種していただきたい方々です。

 

ワクチンを接種されていたならば、少なくてもコロナウイルス感染症の症状の悪化は防げたのではないでしょうか。

 

映像では触れられていませんでしたが、ひょっとしたら併発疾患や合併症があったのかもしれません。そのためにワクチンが接種できなかったのかも。

 

何よりも、食欲が落ちてきた段階で、もっと早めにかかりつけの先生に相談できなかったかなと思うと、とても残念に思います。

 

Ⅰ型糖尿病では、何も食べなくても血糖値は高い状態が続きますので、インスリンの投与が必要です。

 

けれどいつも通りの投与量では低血糖になって危険ですので、こういう時に備えてあらかじめ主治医の先生が指示を出されていたと思うのですが。。

 

主治医の先生と連絡が取れていなかったのでしょうか?

 

往診の先生はコロナ患者専門の先生で、主治医ではなかったようです。

 

このような映像を見ると、患者さんがご自分の病気を正しく理解することの重要性を改めて感じます。

 

この患者さんも、糖尿病という病気、インスリン投与の必要性や糖尿病性ケトアシドーシスの危険性をちゃんと理解されていたならば、早い段階で主治医に相談をされていたでしょうし、そんな自発的な行動がこの患者さんの命を守ったはずだと思うのです。

 

 

糖尿病は併発疾患や合併症との絡みもあり、複雑で、説明する時に苦労します。

 

できるだけ分かりやすく要点をお話するように心がけておりますが、どのくらい理解していただけているんだろうと、正直思うことがあります。

 

それでも何度も何度もしつこくお話しをするのは、動物の場合は飼い主様に病気をちゃんと理解していただけなければ治療を続けられないし、良い結果が得られないとわかっているからです。

 

『食欲がなかったので(低血糖になるのが怖くて)インシュリンを打たなかった』という判断は、病気を理解していらっしゃる方ならば、まずなさらないでしょう。

 

少なくても一度相談していただけるものと思います。命がかかっていますから。

 

 

ところで診察室で時々、一通り説明をした後で、「先生に全てお任せします。」とおっしゃられる飼い主様がいらっしゃいます。

 

一見、絶対的に信頼されていて、良いことのように思われるかもしれません。実際にそういう方が大半だと思っています。(というか思いたい😅)

 

けれど、捻くれ者の私は、これはとても危うい状況だと思うのです。

 

これって、ご自分で考えて判断するべきことを、私に丸投げするってことではありませんか?

 

病気を理解することも放棄していませんか?

 

「生殺与奪の権を他人に握らせるな!」と、冨岡義勇さんもおっしゃっていましたしね。😉

 

それに、結果がうまくいけば良いのですが、悪い結果になった場合は全て私のせいにしようという、保険のようにも感じるのです。🤨ココロガセマイ😓

 

きっと考えすぎなのでしょうけれど。😆

 

 

正しい知識や情報を知っているのと知らないのとでは、結果に大きな差が出ます。そして、それは時に、命をも左右することがあります。

 

災害時やコロナ禍の今なら、なおさらです。

 

未来は、その人が何を選択しどう行動したかによって変化します。

 

間違った情報に惑わされないでください。命を失ってから後悔しても遅いのです。

 

そんなことを考えさせられた映像でした。提供していただいた方々に感謝申し上げます。