私たちの体は、神経と内分泌(ホルモン)と免疫の相互の働きによって、様々な外界の環境の変化から守られています。
ホルモンとは情報を伝えるための化学物質で、標的器官の受容体と結合することで作用を発現させます。
内分泌器官は、脳下垂体(前葉、後葉)、甲状腺、副腎(皮質、髄質)、膵臓(ランゲルハンス島)、上皮小体、性腺(卵巣、精巣)です。
その他、特定の細胞からは、エリスロポエチン、レニン、視床下部ホルモン、消化管ホルモンなどが分泌されます。
ホルモンの病気は、そのホルモンの血液中への分泌量が多いか、少ない(無い)かのどちらか、または標的器官がホルモンに反応しにくくなる状態で、機能亢進症(過剰症)とか、機能低下症(機能不全)という病気です。
ただし、各ホルモンの血中濃度が高いか低いかだけではなく、診断や治療はあくまでも症状を伴う時だけです。
なので、今回はホルモン検査を理解していただくために、各ホルモンの働きについてのお話をします。
1)甲状腺ホルモン(T4)
血中T4濃度低下とTSH、寒冷、興奮、妊娠で分泌が促進される
①基礎代謝を促進(タンパク、糖質、脂肪の分解促進)、熱産生・酸素消費増加作用
②血糖値上昇(消化管からの糖吸収促進)、コレステロール低下作用
③心機能亢進(心拍数、心拍出量増加)、交感神経増強作用(β2)
甲状腺機能亢進症:T4↑、fT4↑、TSH(甲状腺刺激ホルモン:下垂体より)↓(2次的)、血中コレステロール↓(脂質がエネルギー源として消費される)
甲状腺機能低下症:T4、fT4↓、TSH↑(2次的)、血中コレステロール↑(脂質が肝臓で分解(胆汁酸に変換)されないため)
2)副腎皮質ホルモン
早朝に高く夜に低いので、検査は朝一番が理想的
①球状帯:10%:電解質コルチコイド:アルドステロン:レニン(AGⅡ)の支配を受ける
②束状帯:75%:糖質コルチコイド:コルチゾール:ACTH(副腎皮質刺激ホルモン:下垂体より)の支配を受ける
③網状帯:15%:性ホルモン:アンドロゲン:ACTHの支配を受ける
①アルドステロン
脱水、血圧低下、腎血流量の低下、アンギオテンシンⅡ、高K血症により分泌促進
レニン(AGⅡ)の支配を受け、体液量の調節と血圧維持(腎臓でNa+再吸収、K+とH+排出)
②コルチゾール
抗炎症、免疫抑制、血糖上昇、脂質代謝抑制、骨形成抑制、アルドステロン様、アンドロゲン様作用
副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群):多飲多尿、糖尿病、免疫力低下、易感染性、高血圧・高Na低K血症、骨粗鬆症、消化管潰瘍、皮膚菲薄化・石灰沈着
副腎皮質機能低下症(アジソン病):低血圧(アルドステロン不足)、色素沈着、低Na高K血症、低血糖
副腎皮質機能亢進症と低下症はACTH刺激試験によって診断します。
3)膵臓ランゲルハンス島ホルモン
①A(α)細胞:20%:グルカゴン
②B(β)細胞:70%:インスリン
③D(δ)細胞:10%:ソマトスタチン
⚫︎インスリン:食後の血糖値上昇で分泌促進、血糖値が正常になると分泌低下
a. 肝・筋・脂肪細胞に作用して、食物中のブドウ糖(グルコース)、脂肪酸、アミノ酸を取り込む
b. グルコースをグリコーゲンに合成して肝臓や筋肉に貯蔵する
c. グルコースを脂肪に合成して脂肪細胞に貯蔵する
インスリンがないと、食事をしても体の中にグルコースを取り込んでエネルギー源として利用することができないので、代わりに体脂肪が分解されエネルギーとして利用されます。
なので糖尿病では、食欲旺盛にもかかわらずどんどん痩せてきます。
血中インスリン濃度を測定することで、糖尿病が1次性(インスリン依存性)か2次性(インスリン非依存性)かの鑑別を行います
4)上皮小体(副甲状腺)ホルモン(パラソルモンPTH)
①破骨細胞に働いて骨を溶かし血中Caを上昇させる(過剰で骨粗鬆症、不足でテタニー症状)
②腎臓尿細管でCaの吸収促進とリン酸の再吸収抑制
③カルシトニンと拮抗的に作用する
慢性腎臓病では、腎臓からのリンの排泄障害とカルシウムの再吸収障害により、2次的に上皮小体機能亢進症が起こります
5)性ホルモン
①卵巣、胎盤、副腎皮質、精巣間質細胞:エストラジオール:発情前期~発情期に高値になる 卵胞嚢腫、卵巣嚢腫、エストロジェン中毒の診断
②黄体:プロゲステロン:卵巣遺残症候群の確認
②精巣、副腎皮質:テストステロン:去勢歴不明のオスの腹腔内潜在精巣の確認
6)腎臓から分泌されるホルモン
①レニン:血圧上昇作用
②エリスロポエチン : 骨髄に作用して赤血球生成を促す
③活性化ビタミンD:腸管からCa2+吸収を促進
腎不全(末期)ではエリスロポエチンの分泌不足によって腎性貧血が生じます
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※時々お問い合わせをいただくのですが、診察を伴わない個々のご質問にはお答え致しかねます。申し訳ありません。