インターフェロン(IFN)は、1954年にウイルスの増殖を抑える物質として発見されました。
ヒトを含めた動物の体内にもともと存在し、腫瘍細胞の出現や病原体(特にウイルス)などの異物の侵入に反応して、個々の細胞が分泌する蛋白質の一種(サイトカイン)です。
①ウイルス増殖阻止
②(腫瘍)細胞の増殖抑制
③免疫系や炎症の調節 などの働きをします。
動物用医薬品としては、生体内での不足分を補う目的で(援護射撃)、抗ウイルス作用や抗癌作用を期待して用いられています。
作用機序は、生体内のものと同様です。
3つのタイプに分けられますが、臨床的に重要なのはⅠ型とⅡ型で、一般的なIFNとはⅠ型インターフェロンのことを指します。
動物薬としては、現在、3種類のお薬があります。
①Ⅰ型インターフェロン
IFN-α (アルファ):インターベリー:犬(猫)用
IFN-ω(オメガ):インターキャット:犬猫用
②Ⅱ型インターフェロン
IFN-γ (ガンマ):インタードッグ : 犬用
●Ⅰ型インターフェロン
抗ウイルス作用や抗癌作用を期待して用いられています。
作用の特性上、感染初期の投与が効果的です。
種特異性が低く、動物用医薬品としては犬と猫に用いられています。
IFN-αとIFN-βは、リンパ球(T細胞、B細胞)、マクロファージ、線維芽細胞、血管内皮細胞、骨芽細胞など、多くの細胞で産生されています。
ウイルス感染に反応して誘導される抗ウイルス系のサイトカインです。
さらに、マクロファージとNK細胞(ナチュラルキラー細胞)の両方を刺激して、腫瘍細胞に対しても直接にその増殖を抑制するとされています。
ウイルス感染に対して期待される主な作用は3つです。
1)感染した細胞内でのウイルスの複製(コピー増殖)を抑制する
2)ウイルスに感染していない正常な細胞を、NK細胞の攻撃から保護する
3)NK細胞を活性化させて、ウイルス感染細胞を除去する
さらに活性化されたNK細胞は、IFN-γ (Ⅱ型インターフェロン)を放出することで、T細胞依存性の細胞障害を誘導することが期待されています。
●Ⅱ型インターフェロン
種特異性が高く、犬のアレルギー性皮膚炎や耳血腫、免疫介在性皮膚炎の治療に用いられています。
IFN-γ は、免疫系の細胞(T細胞)によって分泌され、マクロファージを活性化させるとされています。
免疫系と炎症反応を調節する働きが期待されます。
IFN-γ にも、抗ウイルス作用と抗腫瘍作用がありますが弱く、代わりにIFN-αとIFN-βの効果を増強する働きをするとされています。(間接作用)
IFN-γ は感染箇所に白血球を誘導し(炎症強化)、マクロファージを刺激して細菌を貪食させるとされています。
免疫応答の調節に関与していて、過剰な産生は自己免疫疾患につながる可能性があり、注意が必要です。
どのIFNも副作用はほとんどないと言われていますが、混合ワクチン接種後のような、発熱、だるさ、投与部位の紅斑や痛みは認められます。
その他、私は経験がありませんが、痙攣や、稀にめまい、蛋白尿、脱毛、沈鬱、間質性肺炎などが報告されています。
私たちの病院では、主に初期のウイルス感染症に対して、IFN-ωを使用しています。
腫瘍に対する治療としては、乳腺癌、扁平上皮癌、肥満細胞腫、肛門嚢腺癌に対して、IFN-ωの局所投与が一部に有効だった、という報告がありますが。。
腫瘍の治療薬としては、費用対効果を考えると、個人的には懐疑的です。
そもそも腫瘍に対する治療は、効能外使用ですしね。
IFNの効果や副作用を理解した上で、少しでも+αの治療をしてあげたいという方向けのお薬という位置付けで、私から積極的にお勧めすることはありません。
IFNは決して万能薬ではありませんし、誰にでも安易に使用されるべきお薬でもありません。
一番使用されているIFN-ω の注意書きには、『黄疸のあるものには使用しないこと』『早期治療に使用すること』とあります。
そのため、老犬猫や慢性疾患があり痩せて体力のない子には適さない場合があります。
もしもそのような子に使用する場合には、十分な補液や栄養補給などの支持療法とセットでなければ、治療は成功しないでしょう。
INFは直接的に作用するお薬ではなく、感染初期に間接的に、自身の細胞性免疫を強化する形で作用するお薬だからです。
※時々お問い合わせをいただくのですが、診察を伴わない個々のご質問にはお答え致しかねます。申し訳ありません。