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食物アレルギーの検査と治療

 

食物アレルギーは、アレルギーの原因物質(アレルゲン)である食物を摂取した時に、皮膚疾患消化器疾患などの有害な症状を引き起こす免疫介在性の病気です。

 

アレルゲンとなる食材はタンパク質ですが、炭水化物としての穀物も少量のタンパク質が含まれていて、小麦、米、大豆、ソバ、コーンなどもアレルゲンとなり得ます。

 

皮膚の症状が現れる遅延型アレルギーでは、季節に関係なく1年中、アトピー性皮膚炎とよく似た皮膚の赤みと痒みが、顔面や耳、背中、肛門周囲、パッドとその周辺などに現れます。

 

アトピー性皮膚炎と同様に若齢での発症、特に1歳未満での発症が多く、排便回数が多い(1日3回以上)場合もあります。

 

けれど、アトピー性皮膚炎とは異なり、特に遅延型アレルギーではステロイド剤で痒みが治りにくいことが多いです。

 

 

食物アレルギーは、Ⅰ型(即時型)アレルギーと、Ⅳ型(遅延型)アレルギーに分類されます。

 

違いは、Ⅰ型アレルギーは、アレルゲン食物を摂取直後〜数時間後、急速に、じんましん、呼吸困難、嘔吐、下痢、急激な血圧低下などの、重度の症状が現れます。

 

命に関わることもありますので、このタイプでは厳密にアレルゲン物質を避けなければなりません。

 

Ⅳ型アレルギーでは、アレルゲン食物を摂取した数時間後〜数日後に、皮膚の発疹、湿疹、腹痛、下痢、便秘、関節痛、頭痛などの症状が現れます。

 

Ⅰ型アレルギーとは違い、Ⅳ型アレルギーは食事と症状発現との間に時間差があるために、アレルギーであるとわかりにくいです。

 

さらには、アトピー性皮膚炎と食物アレルギー(Ⅳ型)が合併しているタイプも存在し、ややこしいです。

 

 

診断は、まず外部寄生虫や感染症などの、皮膚に痒みを生じる他の原因を除外します(駆除剤を投与します)。

 

その後、Ⅰ型アレルギーが疑われる場合は、血液検査でアレルゲン特異的IgE測定を行います。

 

Ⅳ型アレルギーが疑われる場合は、リンパ球反応検査(血液検査)や適切な療法食による除去食試験を行います。

 

検査は、ステロイド剤や免疫抑制剤などの薬剤の影響を受けるため、治療開始前に行うことが望ましいです。

 

 

1)アレルゲン特異的IgE測定(Ⅰ型アレルギー)

アレルギーの原因(アレルゲン)を調べるための検査です。

 

この検査は定量検査ですので、各検査項目ごとに(-)~(4+)までの判定が得られます。

 

環境因子(ダニ、カビ、昆虫、花粉)と食物に対する検査が可能です。

 

Ⅰ型アレルギーでは、微量の摂取でも致命的なアレルギー反応を引き起こす可能性がありますので、高い抗体量が検出された食物は避けるのが賢明です。

 

例えば牛肉に強く反応する子は、牛革製の首輪やバッグ、靴、ソファーなどを舐めたり噛んだりさせないような注意も必要かもしれません。

 

さらに、交叉反応アレルゲンが存在しますので、それらを含めた警戒が必要となります。

 

ただし検査結果は症状と相関しない場合もあり(IgGによる疑陽性?)、臨床症状と合わせて総合的な判断が必要です。

 

 

 

2)リンパ球反応検査型アレルギー)

a)主要食物アレルゲンパネル検査:原因アレルゲンを知りたいとき

 

b)除去食アレルゲンパネル検査:食べられる食物を知りたい時

 

現在は犬のみ実施可能です。(猫は不可🙀😿)

 

犬の食物アレルギーでは、IgEよりもリンパ球が関わっている場合が多いことがわかっています。

 

Ⅳ型アレルギーでは、Tリンパ球(細胞性免疫)が関与していることがわかっています。

  

この検査によって、リンパ球が反応する食物を検出することができ、さらに反応しない食物を知ることができますので、除去食試験を安全に行うことができます。

 

新しいアレルギー反応が出現する場合がありますので、定期的な検査が推奨されます。

 

 

 

3)アレルギー強度検査

 アレルギーで皮膚に集まるリンパ球(ヘルパーT細胞)の割合が多いかどうかを調べる検査です。

 

その子がアレルギー体質であるかどうか、症状を抑えるためにステロイド剤などの薬剤の使用が必要かどうかを調べるための検査です。

 

 

 

4)除去食試験型アレルギー)

専用の療法食とお水のみの食事を最低1カ月間継続し、症状の改善が見られるかを調べます。

 

その間、おやつや他の食べ物は一切与えられません(ほんの少しでも不可🆖❗️)ので、ご家族全員の協力や一致団結!が必要です。

 

症状の改善後、以前の食事に戻した時に再び症状の悪化が認められたならば、診断が確定します。

 

リンパ球反応検査を行なっていれば、検査結果に基づいて療法食を選択します。

 

Ⅰ型アレルギーのアレルゲン食材が、Ⅳ型アレルギーのアレルゲンになるとは限りません。

 

けれど有害な反応は出来るだけ抑えたいので、避けたほうが無難です。

 

なので、特異的IgE測定で高い抗体量が検出された食材を避けて選びます。

 

あるいは、その子が今まで食べたことのない食品が使用されている療法食を選びます。

 

市販されているフードのように、使用されている原材料の数が多いと、どの食材が悪さをしているのかがわかりません。

 

なので、タンパク質と炭水化物の食材がそれぞれ1種類ずつのものが理想です。

 

 

除去食試験終了後も、療法食以外の食べ物やおやつは与えないほうが良いでしょう。

 

あるいは、症状の悪化に気をつけながら1種類のタンパク質(食材)を、2週間間隔で療法食に加えていく方法もあります。

 

これによって、食べても良い悪いの判定がつけられます。

 

1種類ずつ安心して食べられる食材を、地道に増やしていくのです。

 

 

さらに皮膚に細菌や真菌の2次感染がある場合には、治療を並行して行います。

 

痒みが激しい時には、ステロイド剤などの痒みを抑えるお薬を投与する場合もあります。

 

いずれにしても、疑わしい食物は与えないことが懸命です。🙂

 

 

アレルゲンがわかり、それを避けることができれば症状は改善するはずです。

 

けれどアレルゲンは1つとは限らず、アトピー性皮膚炎が合併していたりして、食物以外のアレルゲンが存在する可能性もあります。😣

 

食物は食べなければ良いですが、ダニや花粉は実際には避けて通れません。😔

 

なので、治療は出来るだけアレルゲン物質を避ける工夫をするということになります。

 

具体的な対策はケースバイケースです。

 

お話を伺いながら、実施可能な具体的な方法をご提案いたします。

 

大変ですが、少しでも症状が良くなるように、焦らずに治療を続けましょう。🙂

 

 

 ※時々お問い合わせをいただくのですが、診察を伴わない個々のご質問にはお答え致しかねます。申し訳ありません。

 

 

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