こんにちは。院長の長谷川です。
先日診察中、ある猫ちゃんの飼い主様とお話をしているときに、
「最近越してきたお隣のワンちゃんがよく吠える子で、鳴き声がするたびにうちの子が『ビク』って緊張するんです。
もう少し吠えないようにして欲しいんですけど、なかなか言いにくくて。。。」 とおっしゃっていました。
ここ4~5年でしょうか、うちの病院の近くにも賃貸の集合住宅がたくさん建って、ペット飼育ができるところも増えているようです。
この方もアパートで猫ちゃんと暮らしていて、そこは犬猫飼育可のようです。
よく吠えるワンちゃんとシャイな猫ちゃんが、集合住宅のお隣同志で暮らす⁉️
確かに、猫ちゃんには災難ですね。(ワンちゃん、ごめんなさい💦)
今回は集合住宅で、ワンちゃんと猫ちゃんが出来るだけ快適に、他の住民の方からも安心して可愛がっていただけるように、必要と思うことをお話しします。
※写真の子たちは本文とは関係ありません
特に、猫ちゃんに比べて鳴き声などの騒音問題や、公衆衛生上の注意点が多いと思われる、ワンちゃんを中心にお話します。
ワンちゃんの飼い主さんなら、お散歩中に出会った小さなお子さんにも安心してなでなでしてもらって、「カワイイ💕」て言って欲しいですよね?
そうなるように、集合住宅で暮らすワンちゃん達に、公衆衛生(エチケット)上、行って欲しいと思うことです。
1)狂犬病の予防注射(毎年)
2)レプトスピラが含まれている混合ワクチン接種(毎年)
3)ノミとマダニの駆除薬投与(春~秋までの吸血期間中)
4)検便と駆虫(定期的)
5)不妊(避妊・去勢)手術
6)毎日の十分なお散歩
7)むだ吠え防止などのしつけ など
ワンちゃんはやることがいっぱいです。
狂犬病予防法という法律で、生後90日を過ぎたワンちゃんには毎年の狂犬病の予防接種が義務付けられています。
もちろん室内犬も、室外犬も一緒です。同じ犬ですから。
大勢の人が暮らす集合住宅では、人間も感染する伝染病の予防注射は、決まりごととして入居の必須条件になっているはずです。
(逆に、動物が飼育可能な物件の入居時に、そういう話を何もされなかった場合は、その不動産会社は少し無責任な会社かもしれません)
レプトスピラ感染症はネズミの尿から犬や人間が感染する伝染病で、家畜伝染病予防法の『届出伝染病』であり、犬の輸出入検査の検査項目にもなっています。
新潟県はレプトスピラの発生地で、この辺は水田や畑が多い所ですし、ワンちゃんって色々なものを舐めたり咥えたりしますよね?
そこにネズミの尿がついているかもしれません! なので対策(予防注射)が必要なのです。
ノミは他の犬や猫からもらい、マダニはお散歩コースに生えている草の葉の裏側に潜んで、獲物のワンちゃんが通るのを待っています。(⚠️人も吸血されます)
そしてマダニは、ワンちゃんの皮膚に直接食いつき、吸血してお腹がいっぱいになると体から離れ、その周辺に潜みます。
そしてお腹が空くと、通りすがりの動物に取りついて吸血を繰り返します。
マダニは吸血するだけでなく、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)など、人間が感染すると命に関わる恐ろしい病気を引き起こす可能性があり、とても危険な生き物です。
お散歩をするワンちゃん達には、是非、駆除薬を投薬していただきたいです。
マダニを家に持ち込まないで!って感じですね。
おそらく共用の場所(階段やエレベーター内、通路)で排便・排尿をさせる方はいないと思いますが、マーキングやお粗相をするワンちゃんはいるでしょう。
寄生虫は動物の便や、一部は尿から人間に感染するものもいます。
水で流しても薄まるだけで、寄生虫卵は乾燥に強くて、そこに永く残ります。
なので、定期的な検便や駆虫薬の投薬が推奨されます。
そうでなければ、共用の場所ではワンちゃんを抱っこするか、ケージに入れて移動させ、下に降ろさないようにするほうが良いでしょう。
不妊手術はマーキングや無駄吠えの予防、十分なお散歩は欲求不満ストレスによる無駄吠えの予防になります。
もちろん小型犬だって毎日のお散歩が必要です!
防音設備の整ったお部屋なら良いのですが。。。集合住宅ですからね、鳴き声の問題は大きいと思います。
小型犬では、分離不安の問題もあるかもしれません。
小さなアパートなどでは、建物全体を自分の縄張り認定してしまい、他の入居者の方がお部屋内を移動しただけで吠えるワンちゃんがいるかもしれません。
『かわいいワンコ💕』ではなく、『うるさいワンコ😤』や『迷惑なワンコ😠』と認定されてしまったら、飼い主として、悲しいですよね?
お隣のお部屋と接する壁に、大きくて厚めのラグをかけたり、本棚などの大きめの家具を置いたりするといいかもしれません。
そういえば私が高校生の時、校舎の改築工事のために古い木造の教室での練習を余儀なくされた私たち吹奏楽部員は、家から持ち寄った厚めの毛布を壁に貼り付けて、窓を閉め切って練習していました。
校舎の周りは住宅地でしたので、騒音をできるだけ小さくするための処置でしたけど、意外と効果があったように記憶しています。
厚めの布地は、音を吸収してくれるようです。
そして、ワンちゃんの鳴き声に怯えている猫ちゃんがいるということを、ワンちゃんの飼い主様には、ぜひ知っていただきたいです。
先の猫ちゃんの飼い主様には「不動産屋さんに連絡をして、注意していただいたらどうですか?」とお話ししました。
我慢しているだけでは何も変わりませんし、人間は指摘されないと、自分では気付けないこともありますからね。
「獣医さんに、『慢性的なストレスが続くと、猫ちゃんの腎臓病が悪化するかもしれませんよ』って言われましたってお伝えください」とも言いました。
元気でよく吠えるワンちゃんの飼い主の方は、引っ越して来られた時に、
「うちの子がご迷惑をおかけするかもしれません。」
と、周りのお部屋の方達に一言挨拶をされたら、印象も変わると思います。
犬を鳴かせっぱなしで、『すみません』の一言もないと、正直、印象が悪いと思いますよ。
できることは全て行い、不要なトラブルの防止に努めるのが賢明ではないでしょうか?
他に注意していただきたいことは、玄関やベランダからの逃亡や落下の予防です。フェンスやガードは必要だと思います。
逃げ出して、運悪く人を噛んでしまったら大変ですからね。
⚠️犬が人にけがを負わせてしまった時は、速やかにその旨を飼い主本人が動物管理センター(保健所)に届け出なければなりません。そして狂犬病予防法に基づき、狂犬病の検診(2回)を受ける義務が発生します。毎年予防接種を受けていれば、基本的に犬が収容されることはありません。
猫ちゃんも同様に、ベランダからお隣の部屋に行ってしまったり、落下することのないように対策をしていただきたいと思います。
猫ちゃんは、不妊手術を受ければワンちゃんほど鳴きませんので、騒音の問題は少ないと思いますが、排泄物(尿)の臭いの問題があるかもしれません。
トイレ砂はこまめに変えて、臭いが外に漏れないような注意が必要でしょう。
あとは夜中の運動会や分離不安による鳴き声などの騒音問題でしょうか?
猫ちゃんは完全室内飼育だと思いますが、猫パルボウイルス感染症のように、人を介して(ヒトが伝播してしまう)猫ちゃんが感染する猫の伝染病もありますので、混合ワクチン接種は必要です。
飼い主様と一緒にリードでお散歩をする猫ちゃんは、ワンちゃん同様、ノミとマダニの駆除薬をお勧めします。
室内での爪研ぎを心配される方は、ネイルキャップがオススメです。
ただし装着すると爪が出っ放しになり、床の材質によっては、歩くときにワンちゃんのようにコツコツ音がすることがあるかもしれません。
床にマットを敷くなどの対策は、したほうが良いでしょう。
他には、いつでも外の景色が見られるように工夫したり、上下運動ができるようにキャットタワーを用意したり、おもちゃを用意して出来るだけ遊んであげたりして、ストレスを少なくする工夫をしてあげてください。
猫ちゃんにとって、ストレスは万病の元ですからね。
動物と一緒の生活は楽しいです。
大切な家族には、できるだけ快適に過ごして欲しいですよね。
以上、動物たちの健康管理のご参考にしていただけましたら幸いです。
※時々お問い合わせをいただくのですが、診察を伴わない個々のご質問にはお答え致しかねます。申し訳ありません。