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皮下点滴と強制給餌

病気になった時、食事を取れるかどうかで、その後の経過がかなり違ってきます。

 

必要な栄養を補えなければ、体は確実に痩せて弱っていくでしょう。

 

脱水も同じで、長引けば体の中で悪い連鎖反応が始まってしまいます。

 

皮下点滴(補液強制給餌(栄養補給)は、自力で食べられない子のための支持療法です。

 

皮下点滴で水分と電解質を、強制給餌で栄養分を補います。

 

通院していただいて、私たちが病院で行うこともありますが、ご家族の方たちが協力し合って、ご家庭で行うこともできます。

 

むしろその方が、通院のご負担や動物のストレスも解消され、ご都合の良い時間に行うこともできるので、良いのではないかと思っています。

 

もちろんそれができる人たちのお話であって、決して皆様に強制するものではありません。

 

できないとおっしゃる方には、通院していただいて私たちが処置を行います。

 

皮下点滴(補液)は、動物の皮下に点滴の液体を注入する医療行為です。

 

中身は水と電解質で、甘くないスポーツドリンクのようなもので、栄養剤ではありません。

 

猫の腎臓病や下痢・嘔吐、感染症などによって、脱水症状を起こしている子に対して行われます。

 

特に慢性的に脱水症状を起こしている子に対しては、お家での皮下点滴をお勧めしています。

 

人間と違って、動物は皮膚が筋肉の膜にゆるくくっついていて、皮膚をつまむとビヨ~ンって伸びますよね?

 

そうしてできた皮膚と筋肉の間の空間に点滴液を溜めておいて、その周りの毛細血管からゆっくりと吸収されるようにするのです。

 

血管に直接行う静脈点滴と違って短時間で終わるので、飼い主様にも動物にも優しいやり方です。

 

さらに毛細血管からゆっくりと吸収されるので、早く注入しても心臓への負担もほとんどなく、点滴による急激な血圧の上昇が起こりません。

 

 

ただし輸液の量が多過ぎれば、結果的に血圧は上昇し、場合によっては肺水腫を起こすこともあり得ますので、点滴の量と間隔は指示をお守りください。

 

皮下点滴と強制給餌/長谷川動物病院
点滴バッグ、チューブ、針/長谷川動物病院

  

皮下補液は、①落下式の点滴バッグ ②注射器 を使用する方法があります。

 

私たちの病院では、一回の点滴量が50㎖以上の場合がほとんどなので、落下式の点滴バッグで行っていただいています。その方が簡単ですからね。

 

点滴バッグ、点滴チューブ、注射針(または翼状針)をセッティングした状態でお渡ししています。

 

そして点滴のたびに、針を変えていただいています。

 

必要であれば、特に最初の頃は、注射部位周辺の皮膚の毛刈りを行います。

 

その方が肩甲骨などのランドマークの確認ができて、注射する場所がわかりやすいようです。

 

そして説明をしながら、実際に目の前でご家族に行っていただき、アドバイスを行います。

 

上手くなるコツは、繰り返し行ってご自分なりのコツを掴み、慣れることだと思います。

 

慣れてしまえばそれほど難しいことではないのですが、医療行為であること、注射針を使うということが皆様のプレッシャーとなって、『難しいと感じられる方が多いようです。

 

皮下点滴と強制給餌/長谷川動物病院
経口給餌用シリンジと鼻カテーテル/長谷川動物病院

 

強制給餌(栄養補給)は、口から直接か、またはカテーテルを通して栄養補給を行います。

 

経口給餌、②鼻カテーテル、③食道カテーテル、④胃カテーテルでの方法があります。

 

 

それぞれ与えられる栄養物の質や量が異なり、メリットとデメリットがあります。

 

「体にチューブを繋げるのは可哀そう」とおっしゃる方が多い印象ですが、肝リピドーシスなど、食欲不振の期間を強制給餌で乗り切れば回復可能な病気もありますので、是非頑張っていただきたいところです。

 

また、チューブを通してお薬の投与もできますし、吐き気があればそれを抑える治療も行います。

 

経口給餌は、固形物、液体共に給餌可能ですが、与えられる量は多分少なく、口内炎などお口を痛がる子に行うことは難しいです。

 

鼻カテーテルは局所麻酔で設置可能ですが、チューブが細いので詰まりやすく、液体の流動食しか投与できず、またチューブが抜けやすいので入れ直しが必要になるという難点があります。

 

食道カテーテル胃カテーテルは、設置するために全身麻酔が必要ですが、食道カテーテルの設置は短時間ですみます。

 

両方ともチューブが比較的太いのでドロドロの流動食が投与可能ですし、量も多めに与えられます。

 

それぞれのメリット、デメリットを理解した上で、選択をしていただけたらと思います。

 

 

※時々お問い合わせをいただくのですが、診察を伴わない個々のご質問にはお答え致しかねます。申し訳ありません。