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らしくない犬のてんかん

らしくないてんかん/長谷川動物病院
てんかん発作型分類/てんかんMinds版やさしい解説より

 

てんかんは、脳の慢性疾患です。

 

脳の神経細胞(ニューロン)に突然起こる激しい電気的な興奮によって、発作(てんかん発作)を繰り返す病気です。

 

間近で見ているのは辛いことですが、ほとんどの発作は数分程度で治ります。

 

重積状態になり呼吸ができなくなる時以外、命の危険はありませんので、静かに見守ってあげてください。(症候性てんかんでは原因にもよりますが…)

 

てんかんは発作が起こる原因によって、特発性(明らかな脳の病変が認められない)と、症候性(脳の病変が認められる)に分けられます。

 

症候性てんかんは、脳出血、脳外傷、脳炎、髄膜炎、脳の低酸素、脳梗塞、腫瘍などが原因で起こります。

 

てんかん以外でもけいれんを起こす感染症や、中毒、代謝異常症がありますので、問診や神経学的検査、血液検査によって1つ1つ可能性を除外してゆきます。

 

てんかん発作は、過剰な電気的な興奮が脳の一部分に起こる部分(焦点)発作と、脳の大部分または全体で同時に起こる全般発作に分けられます。

 

さらに、意識の有無、てんかん発作の症状、発作型、発作の左右対称性によって分類されています。

 

一般的なてんかんは、突然意識がなくなり倒れて、泡を吹きながら手足をガクガク震わせるイメージでしょうか?

 

これは、全般発作の強直間代発作の症状です。

 

てんかんの中には、『これもてんかん?』という症状があり、今回はそんな、『らしくないてんかん』のお話です。

 

部分発作は、過剰な電気的興奮が脳の一部に限定されて起こる発作です。

 

意識のある単純部分発作では、運動機能の障害(体の一部がつっぱる、体全体が片方に引かれる、片側の手や足のしびれ等)、感覚の異常(輝く点や光が見える、音が響く、耳が聞こえにくい、体の一部分がピリピリする等)、自律神経の異常(頭痛や腹痛、吐き気を催す等)など多彩な症状がみられます。

 

動物は話してくれませんので、視覚や聴覚、味覚、触覚などの異常は、ご家族のお話からの判断になります。

 

突然、空を見つめて口をパクパクさせるハエ咬み行動は、視覚の異常で何か幻が見えているらしいです。

 

そして柴犬によくみられる尾追い行動も、一部は触覚の異常によるてんかん発作であるとされています。

 

普段おとなしい犬が突然凶暴化する、特発性激怒症候群もてんかん発作の1つとされています。

 

さらに意識障害の見られる複雑部分発作では、急に動作を止めボーッとする発作や、ふらふらと歩き回ったり、口をもぐもぐ、ペチャクチャさせるような、無意味な動作を繰り返す(自動症)などの症状がみられ、けいれんはありません。

 

また全般発作の中でも、

🐶 突然、崩れるように倒れてしまう脱力発作

🐶 突然、意識が短時間だけなくなり、動作が停止してぼんやりした目つきになり、呼びかけに反応しなくなる欠神(プチマル)発作

🐶 瞬間的に、全身や体の一部の筋肉が収縮して、よろけたり転んだりするミオクロニー発作

ラフォラ病は、常染色体劣性遺伝様式をとるM・ワイヤーヘアード・ダックスが好発犬種の神経進行性疾患です。光や音などの外部刺激によって、驚愕反応に似た瞬間的な全身の突発性筋収縮(ミオクロニー発作)が認められます。

 

これらは全て、てんかん発作です。

 

 

てんかんの診断には、ご家族など発作を目撃した方からの情報がとても重要です。

 

①いつ、②どこで、③何をしているときに、④どのように始まって、⑤どのようになったかという、発作後の様子も含めて情報が重要です。

 

発作の『前兆』がわかれば、とても助かります。

 

発作を目撃したときには、①落ち着いて、②できるだけ言葉や音を立てずに、③怪我をしないように本人を安全な状態にして、④顔や体には触らずに、よく観察をしてください。

 

発作中に大きな音や刺激を加えると、そのことでさらに発作を助長することがありますので、静かに見守りましょう。

 

発作の始まりと終わりの時刻を確認しておくと、持続時間がわかって参考になります。

 

余裕があれば、スマホなどでの動画を撮っていただくことも有用です。

 

ただし、次の時は⚠️緊急事態⚠️ですので、すぐに病院へ連絡をしてください。

 

群発発作:1日に発作が2回以上、何度も起きる

重積発作:発作が5分以上続くか、1回目の発作が終わった後、意識が戻らない(呼びかけに反応しない)まま、次の発作が起きる

 

 

てんかんの治療は飲み薬によって、発作の回数を減らし、症状の軽減を目指します。

 

残念ながら、発作をなくすことはできません。

 

けれど発作の回数を減らし、症状を軽減させることで、発作によって引き起こされる脳の障害の抑制が期待できます。

 

症候性てんかんの場合には、治療可能であれば原因に対する治療が望ましいです。

 

 

動物たちの健康管理のご参考にしていただけましたら幸いです。

 

 

 ※時々お問い合わせをいただくのですが、診察を伴わない個々のご質問にはお答え致しかねます。申し訳ありません。