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外耳炎の治療

 

外耳炎の治療は、お家での点耳薬の点耳で行われるのが一般的です。

 

けれど一般的な点耳薬は毎日1〜2回行わなければならず、これが意外と大変だったりします。

 

点耳薬を嫌って、噛み付いたり抵抗するワンちゃんもいます。

 

そんなご苦労をなさっている方々のために、効能は一般的な点耳薬とほぼ一緒ですが、点耳後長期間、外耳道に残留するタイプのお薬があります。

 

病院にて、1週間隔で2回、処置していただきますと、長期間治療効果が持続します。

 

点耳薬を点耳することが苦手な飼い主様の、救世主のようなお薬です。

 

外耳炎は柴犬などの日本犬や、垂れ耳のワンちゃん達に多い皮膚病です。

 

耳の中が赤く腫れて、痒がったり、臭いにおいがしたり、頭を振ったり、イライラして怒りっぽくなったりします。

 

低温の季節に落ち着き、高温多湿な梅雨の季節から秋にかけて悪化しますが、慢性になると1年中症状が治まらない子もいます。

 

外耳道とは耳の穴から鼓膜までの、片側が閉鎖された管状の空間です。

 

なので換気扇をつけずにお風呂場の窓を1つだけ開けた時のように、とても通気性が悪く湿気がこもりやすい場所です。

 

ですから、カビや細菌が繁殖しやすいです。

 

普通耳の中の汚れは、耳の中に生えている細かな毛によって、自然に耳の穴(出口)の方へ送り出されるようになっています。

 

けれど、炎症が激しくて耳道が狭くなってしまうと、多量に作られる老廃物(耳垢)がうまく送り出されなくなったり、そこに細菌や真菌が繁殖して、さらに耳道の炎症が酷くなるという悪循環になってしまうのです。

 

 

元々の原因は、アトピーをはじめとしたアレルギー性皮膚炎や、その子の体質に合わない食物に対する有害反応、耳ダニや、細菌性、真菌性、ウイルス性、自己免疫性、腫瘍性、内分泌性疾患、草の種などの異物も原因となり得ます。

 

そのほか、綿棒を使った耳掃除や、マラセチアの繁殖、不適切な薬剤の耳道内使用によって、炎症をさらに悪化させる可能性があります。

 

外耳炎が長期化すると、さらに奥の中耳炎へ進行したり、耳道内の皮膚が炎症によって肥厚し分泌物が増え耳道が狭くなり、さらに耳道軟骨の石灰化が起きて耳道が塞がってしまったり、鼓膜が破れたりします。

 

 

診断はすぐにつきますが、鼓膜の確認と、耳道の異物や腫瘍の有無、マラセチアの有無など、消去法的に併発疾患があるかどうかの検査が行われます。

 

ただし、すでに耳道が狭くほぼ塞がっていて耳鏡検査ができない場合は、耳垢の検査しか行えない場合もあります。

 

 

治療はマラセチアや細菌、真菌の感染があれば、飲み薬や点耳薬での治療を行います。

 

耳ダニが確認されれば、駆除を行います。

 

炎症が激しい時は、痛みから点耳薬を嫌がる子がいますので、飲み薬の投薬である程度炎症と痛みが治まるのを待ちます。

 

炎症が治まった後に、鼓膜を確認できる子には外耳道の中の分泌物をきれいに洗い流す処置を行い、点耳薬を処方します。

 

けれど中には、点耳薬を点耳することが苦手な飼い主様がいらっしゃいます。

 

そういう時は、病院で、このお薬による治療を行います。

 

1週間隔で計2回、処置を行いますと、長期間改善効果が続いてくれます。

 

ただし外耳炎は再発しやすい病気ですので、残念ながら完治することは稀です。

 

 

外耳炎が慢性化して、外耳道が石灰化して固くなり、耳道が塞がってしまっている場合や、お薬の治療で改善が見られない時には、外科手術で外耳道を取り除かなければ、ワンちゃん達の不快感を和らげてあげることは難しいかもしれません。

 

ただしこの手術を行うと、ワンちゃんは聴力を失うことになりますので、あくまでも最終手段とお考えください。

 

 

動物たちの健康管理のご参考にしていただけましたら幸いです。

 

 

※時々お問い合わせをいただくのですが、診察を伴わない個々のご質問にはお答え致しかねます。申し訳ありません。