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クッシング症候群

院長ブログ/長谷川動物病院
アドレスタン錠/長谷川動物病院

 

『クッシング症候群』をご存知でしょうか?

 

主に中高年のワンちゃんが発症する、内分泌(ホルモン)疾患です。

 

一般的に動物用の『アドレスタン』や、人間用の『デソパン 』というお薬によって治療が行われるのですが、しばらく前から、日本中の病院でこれらのお薬が入手しずらい状態が続いています。

 

以前から継続して投薬されている患者さんが優先されますので、新たに発症した患者さん用のお薬をなんとか入手しなければなりません。

 

こんな時、他の動物病院の先生方に問い合わせをして譲っていただくことが多いです。

 

今回も幸い、使用予定のない先生から譲っていただくことができ、ことなきを得ました。

 

本当に助かりました。感謝感謝です。

 

実は最近、こんな風に病院にお薬が入ってこないとか、ワクチンが入手できないということが起こっています。

(逆に使用期限の近い在庫のワクチンを売り出すこともありますが。。)

 

本当に困ります。

 

この『アドレスタン』とか、『デソパン 』というお薬は特殊で、使用の目的や使用量も限られますので、使用期限ロスを防ぐために、製薬企業が必要な量を実際よりも小さく見積もって、輸入、製造していたことが原因でしょう。

 

企業ですから利益を確保しなければいけませんので、致し方ないのかもしれません。

 

病院としても、高価で使用頻度の少ないお薬は、使用期限ロスを防ぐために基本的には患者さんの治療の意思を確認してから手配を行います。

 

常時用意しておければ良いのですが、そうするとロスになる分を考慮して、お薬の価格を高めに設定しなければいけなくなります。これでは困りますよね。

 

昔の、富山の配置薬のようなシステムが動物病院にもあれば、とても助かるのですけどね。

 

製薬会社はやってくれないかなあと思います。

病院や、飼い主様が声を上げれば、考えてくれるかしら?

 

 

ところで、自然に発症する『クッシング症候群』は、脳下垂体副腎という内分泌(ホルモン)器官の異常によって、血液中のコルチゾールを始めとした副腎皮質ホルモンの濃度が高くなり、その影響で身体中にいろいろな症状を表す病気です。

 

詳しくはこちらをご覧ください。

 

放っておくと、糖尿病や高血圧、心臓病、腎臓病、血栓塞栓症などの合併症を引き起こし、死に至ることもあります。

 

『アドレスタン』や『デソパン 』というお薬は、副腎の働きを抑制して副腎皮質ホルモンを作らせにくくするお薬です。

 

根本的な治療薬ではありませんが、症状の緩和が期待できます。

  

ただし大きな下垂体腫瘍が原因の場合には、逆に症状の悪化が起きることがありますので、超音波検査によって副腎の腫瘍が否定された時には、理想的には投薬前にCTやMRIによる検査が望ましいです。

 

ちなみに『アドレスタン』が登場する以前は、『ミトタン』や『ケトコナゾール』、『セレギリン』などのお薬が使用されていましたが、最近はその必要がほぼなくなりました。 

 

 

動物たちの健康管理のご参考にしていただけましたら幸いです。

 

 

 ※時々お問い合わせをいただくのですが、診察を伴わない個々のご質問にはお答え致しかねます。申し訳ありません。