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避妊手術以外の発情回避方法

 

以前、避妊手術を受けに1匹の猫ちゃんが来院されました。

 

普通は手術の前に一度診察を受けていただくのですが、この子は飼い主のいない猫ちゃんで、やっと捕まったということで食事のお世話をされていらっしゃる方が連れてこられました。

 

診察時に呼吸の様子が異常でしたので、その方の了承を得てレントゲンを撮らせていただいたところ、横隔膜ヘルニアであることがわかりました。

 

麻酔がかけられませんので、もちろんその日の避妊手術はキャンセルです。

 

この猫ちゃんのように、いろいろな理由で避妊手術を受けられない子達がいます。

 

そんな猫達にも発情はやってくるし、外出すれば、妊娠をし2ヶ月後には出産してしまいます!!

 

妊娠をしなければ、猫には犬のような発情期の出血はありませんが、ほぼ1週間あの声で激しく泣き続け、しばらくお休みがあってまた繰り返し、これが発情期間中ずっと続きます。

 

では、手術を受けられない子たちは、どうしたら発情を回避できるのでしょう?

方法は3つあります。

 

 

 

⚠️これらの方法を、決してお勧めしているわけではありません

 健康に何の問題もない子には、避妊・去勢手術が一番の選択だと思っています

 

 

 

1)ホルモン剤の注射     ※現在は製造中止により使用できません

 

成分名プロリゲストンという黄体ホルモン剤を注射することによって発情を抑制します。

犬はほぼ1年に2回の自然排卵動物で、猫は交尾排卵動物という違いがありますが、猫も同じように使用できます。

 

日本では犬用のお薬ですので、猫ちゃんに対しては効能外使用であることをあらかじめ飼い主様にお話して了承を得ています。

 

女の子用のお薬で、男の子に投与しても去勢をしたような効果はありません。

 

投与は皮下注射で行い、2回目は3ヶ月後、3回目は2回目の4ヶ月後、

4回目以降は前回注射の5ヶ月後に、それぞれ行います。

 

メーカーは8回までの投与を推奨していますが、犬猫には閉経がなく発情を半永久的に繰り返しますので、投与はほぼ一生続けなければならないでしょう。

 

なので、金額的には1回の避妊手術料金よりも長生きするほど高くなります。

 

黄体ホルモン製剤の中では比較的副作用の少ないお薬ですが、長期に投与するときには注意が必要です。

 

投与した子は、避妊していない投与していない子よりも子宮の病気(子宮蓄膿症など)になりやすい傾向があります。

 

なので、病気になったときのことも考えておく必要があります。

 

投与時期にも注意が必要で、発情前期、発情期、妊娠期を避けて黄体期発情休止期に投与することになっています。

 

猫ちゃんは長日繁殖動物ですので、日が短い(日照時間が12時間以下)時期の投与開始が望ましいです。

 

もちろん妊娠していないことが前提です。

 

 

2)インプラント剤の皮下埋め込み ※現在は製造中止により使用できません

 

成分名クロルマジノンという黄体ホルモン剤が含まれた徐放性製剤(インプラント剤)を皮下に埋め込むことによって発情を抑制します。

 

できるだけ切皮場所から離れたところにインプラントを埋め込み確実に皮膚を縫合しないと、皮下を移動して傷口から飛び出してくることがあるので処置には短時間の麻酔が必要です。(大人しい子であれば局所麻酔だけでもできるかもしれませんが)

 

シリコン製のインプラントは溶けずにそのまま残りますので、期間が過ぎたら取り出す必要があります。

 

1回の処置により最長2年間発情を抑制することができ、取り出せば1~8ヶ月後に発情が戻り、妊娠・出産することが可能です。

 

猫にも使用できますが、日本では犬用のお薬ですので猫ちゃんに対しては効能外使用であることをあらかじめ飼い主様にお話して了承を得ています。

 

処置する時期や、心配される副作用はホルモン剤の注射とほぼ一緒です。

 

 

3)交尾擬似刺激

 

猫が交尾排卵動物であることを利用した方法です。

猫の解剖学と繁殖学を熟知されている方以外には危険ですのでお勧めできません。

 

 

以上、動物たちの健康管理の参考にしていただけましたら幸いです。

 

 

※時々お問い合わせをいただくのですが、診察を伴わない個々のご質問にはお答え致しかねます。申し訳ありません。