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薬剤感受性試験

 

人や動物の体表や体内には多くの微生物が存在しています。

 

微生物は大まかに、細菌と、カビなどの真菌に分けられます。(他には寄生虫も存在します)

 

健康な状態では免疫細胞の働きと、複数の微生物が互いに牽制し合いながら拮抗状態を保つことで、全体的に安定しています。

 

しかし何らかの原因で、一種類または少数の微生物が優位に増えてしまうと、病的な症状が現れることがあります。

 

症状や現れた場所(部位)から、また顕微鏡による形態観察やグラム染色の結果から、ある程度犯人の目星をつけて、細菌であれば抗菌薬(抗生物質)が、真菌であれば抗真菌薬が処方されます。

 

余談ですが、ウイルスや真菌に抗菌薬(抗生物質)は効きませんので、覚えておいてくださいね。(2次感染菌に対しては有効です)

 

20年くらい昔であれば、ファーストチョイスのお薬がよく効いてくれていました。

しかし最近は耐性菌の出現により、お薬の十分な効果が得られないことが増えています。

 

ファーストチョイスのお薬が効かない時は、2番目、3番目…と続くのですが、そんなことをしていては時間もお金も勿体無い。

 

さらには、耐性菌を増やしてしまう結果にもつながります。

 

時間の節約と、効率的な治療を行うための検査が『薬剤感受性試験』です。

 

この検査は原因となっている菌に対して、どのお薬が効果的であるのかを調べるための検査です。

 

病変部から組織や分泌物を採取して、外部の検査所に依頼して行われますので、結果がわかるまでに5~10日ほどかかります。

 

問題点としては、例えば歯垢や歯石の空気に触れている部分と、深い場所で空気に触れていない部分にいる細菌は違う(好気性菌と嫌気性菌)というように、複数の細菌がいることがほとんどなので、どの細菌が悪さをしているのかということです。

 

さらに検査結果に基づいたお薬で治療をすると、そのお薬が効かない別の菌が増えて(菌交代現象)別の悪さをするという問題が起きるかもしれません。

 

ともあれ、これ以上耐性菌を増やさないための努力は人も動物も共通した課題ですので、この検査の必要性はこれから増してくると思っています。

 

 

※時々お問い合わせをいただくのですが、診察を伴わない個々のご質問にはお答え致しかねます。申し訳ありません。