『減感作療法』をご存知ですか?
犬に多い皮膚病、『アトピー性皮膚炎』
アトピー性皮膚炎の主な治療法は、以下の通りです。
①ステロイド(副腎皮質ホルモン)剤:免疫の働きをいろいろな作用から抑制し、アトピーの症状を抑える
②抗ヒスタミン剤:痒みを引き起こすヒスタミンをブロックし、アトピーの痒みを抑える
③免疫抑制剤:免疫の働きを選択的に抑制し、アトピーの症状を抑える
④インターフェロンγ:免疫のバランスを整えて、アトピーの症状を緩和する
⑤減感作療法:根治のための唯一の治療法
⑥スキンケア:適切なシャンプーと保湿剤による皮膚の保護
⑦サプリメント:ω3脂肪酸を中心とした皮膚に必要な栄養補給
『減感作療法』はアレルギー疾患の原因物質(アレルゲン)を検査で特定して、アレルゲンを少量ずつ増量しながら複数回投与(注射)することで、体を徐々にアレルゲンに慣れさせ、最終的にアレルギー反応を起こさない体質に変えていく治療法です。
減感作療法のための注射剤のお薬があります。
このお薬は、アトピー性皮膚炎の主なアレルゲンの1つ、ハウスダストマイト(チリダニ)に含まれるタンパク質を、徐々に濃度を増しながら、週1回ずつ5~6回注射することで症状の改善を目指します。
今までの減感作療法は長期間に及び、注射の回数も多くて大変でしたが、アレルゲンを陽性率の高い『ダニ』だけに絞ることで、注射の回数が少なく済むようになりました。
また注射後のアレルギー反応を起こしにくいように成分調整が行われていて、このお薬は日本で唯一動物用医薬品として承認を取得している減感作療法薬です。
反面、ダニ以外のアレルゲンに対する作用はありませんので、治療対象はダニのみにアレルギー反応を起こしている犬に限られます。
なので治療対象となる子は限定されますが、『ダニ』のみに強く陽性反応を示すワンちゃんには、とても効果的な治療であると思われます。
アトピー性皮膚炎は病気というよりも体質の問題なので、減感作療法以外の治療薬は症状を和らげるためのお薬であって、根本的に治すためのお薬ではありません。
なので安定した皮膚の状態を保つためには、それらのお薬は投与量を調整しながら、ほぼ一生飲み続けなければならないでしょう。
条件にマッチするワンちゃんは、まずは1回、このお薬を試してその効果を確認して、それから続けられるかどうかを決められたらいいのではないでしょうか?
抗がん剤投与が必要な方達にも、私は同じようにお話しをしています。
感じ方や、結果に対する受け止め方は人それぞれなので、まずは試してみることが一番だと私は思っています。
※時々お問い合わせをいただくのですが、診察を伴わない個々のご質問にはお答え致しかねます。申し訳ありません。