MDR1 とは、 Multiple drug resistance 1 の略です。
マルチ・ドラッグ・レジステンス・トランスポーター
(MDR1Transporter)
『MDR1遺伝子』は『P糖タンパク質』を作る遺伝子です。
肺、腸、腎臓、生殖器、脳の血管壁に存在している『P糖タンパク質』は、毒性のある物質を体の細胞の中に入れないようにするために働いています。
具体的には、消化管上皮細胞の管腔側膜に存在することが確認され、血液脳関門、血液精巣関門、血液胎盤関門にも存在しています。
検問とか関所のような所で、危険な物質を通さないように、見張ってくれている門番のようなものですね。
なので、その門番がいないと危険な物質が関所を楽々と通過して、重要な場所に入ってきてしまいます。
この検査は、殺ダニ用量(高用量)でのイベルメクチン投与や、抗がん剤投与が必要な時に、考慮しなければならない検査です。
それらのお薬を使用可能かどうかの、判断材料として利用されます。
遺伝子変異のある子は、通常の投与量でも、副作用が強く出てしまう危険性があるためです。
ただしフィラリア予防量(低用量)のイベルメクチンでは、副作用が問題になることはあまりないようです。
変異のある子は、薬剤が血液脳関門などで堰き止められずに体内に入ってしまうため、特にイベルメクチンの投与によって、傾眠や運動失調などの神経症状の副作用が現れるようです。
変異がなければ、ほぼ安心してこれらのお薬の投薬が可能です。
🐶 変異の確率が高い犬種 🐕🐾
コリー、オーストラリアンシェパード、ボーダーコリー、シェルティ、ジャーマンシェパード、ホワイトスイスシェパード、イングリッシュシェパード、オールドイングリッシュシープドッグ、ベアデッドコリーなど。
※以前、だいぶ昔のことになりますが、獣医師対象の学術講演会で『ホワイトソックスの犬は注意しておいたほうがいい』という講師の先生のお話を伺ったことがありました。
けれど、このお話は臨床獣医師向けのアドバイスであり、講師の先生の私見も含まれていたと思われます。なので、『ホワイトソックスの犬は要注意』という文章は削除させていただきました。
💉血液検査でわかります(外部委託検査ですので平日のみ可能です)
病院で採血後、検査機関に検体を送り、結果報告まで1週間ほどお時間をいただきます
🐶 検査結果 🐕🐾
1) 発症 「mdr1/mdr1」:薬剤に対し強い副作用が出ることが予想される。
2) キャリアー「MDR1/mdr1」:対立遺伝子の片方に変異あり。薬剤は慎重投与。
3) 変異なし「MDR1/MDR1」:副作用の可能性は低い。
<P糖タンパク質関連薬剤>
駆虫薬 :イベルメクチン・ドラメクチン・モキシデクチン・セラメクチン・ミルベマイシン
抗菌薬: エリスロマイシン、クラリスロマイシン、シプロフロキサシン、レボフロキサシン
抗真菌薬:イトラコナゾール
抗がん剤:ドキソルビシン・ビンクリスチン・ビンブラスチンなど
胃 腸 薬 :ロペラミド、ドンペリドン、シメチジン、ラニチジン、オメプラゾール
免疫抑制剤:シクロスポリン、タクロリムス
ステロイド剤:デキサメサゾン、プレドニゾロン
循環器薬:キニジン、ジゴキシン、ベラパミル、ジルチアゼム、スピロノラクトン
鎮痛剤:ブトルファノール、モルヒネ、フェンタニル
その他:コルヒチン、リドカイン、アセプロマジン、オンダンセトロン
<P糖タンパク質関連抗がん剤>
D Doxorubicin ADM
V VCR
M MIT
A Actinomycin-D
T Taxol
E Etoposide
D Daunorubicin
V VBL
M Mitomycin-C
P Prednisone
💊P糖タンパク質誘導薬💉:リファンピシン、アスピリン、抗がん剤
これらの薬剤の、主に長期投与により『P糖タンパク質』が作られると、それまで効果のあった多くの薬が効かなくなることがあります。
( Multiple drug resistance )
※時々お問い合わせをいただくのですが、診察を伴わない個々のご質問にはお答え致しかねます。申し訳ありません。
参考:MDR1遺伝子変異検査
🤗㊗️ちなみに、イベルメクチンは2015年ノーベル医学・生理学賞受賞の大村智先生によって発見されたお薬です