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長期間作用型の抗生物質?

 

抗生物質は、細菌感染症の治療薬として使用されるお薬です。

 

風邪などのウイルス感染症や真菌など、細菌以外の感染症に対しては、効果は期待できません。

 

細菌感染症が確認された時、または疑わしい時、今後起きる可能性が高いとき、あるいは手術後などに細菌感染を予防する目的でも使用されます。

 

注射、内服、外用剤(軟膏など)、点眼、点鼻、点耳薬として投与されます。

 

人の病院では、抗生物質の使用を制限する動きがあるようです。

 

確かに使わなくてよければ、それに越したことはありません。

 

けれど、動物では特に口腔内など、人間のような衛生的な状態を保つことが難しいために、まだまだ頼らざるを得ないように感じます。

 

抗生物質にはいろいろな種類があり、決してどのお薬でも良いと言うわけではありません。

 

感染部位や症状によって、推奨される第一選択薬、第二選択薬~が、おおよそ決まっています。

 

けれど、動物種によって使用できないお薬があったり、飼い主様が投与できなかったりと、動物では人間とは違う制約が色々あります。

 

さらに必要な時に飼い主様が飲ませたり飲ませなかったりと、中途半端な投薬をすることによって、感染症は治らず、耐性菌ができやすくなります。

 

最適な量を処方していますので、投薬の指示はきちんと守っていただきたいです。

 

それでも、いろいろな理由で飲ませることができなかったり、投薬後に嘔吐や下痢が生じた時には、お薬を変更しますので必ずお知らせくださいませ。

 

自己判断は危険ですし、放置して良くなるはずがありません。

 

決して投与量を減らしたり、勝手にやめたりしないでいただきたいです。

 

 

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このところ、人馴れしていない外猫さんの避妊手術が続きましたので、久しぶりに1回の注射で効果が14日間持続する抗生物質の注射液を使用しました。

 

このお薬の適応症は、細菌性尿路感染症歯周病細菌性皮膚感染症で、犬と猫に対して使用されます。

 

元々適応外ですが、このお薬はセフェム系の抗生物質(第3世代)なので、ウサギやモルモットには使用できません。

 

とても便利なお薬なのですが、私たちの病院では積極的にお勧めするお薬ではありません。

 

むしろ、本音は使いたくないお薬です。

 

ですが、触ることすらできない動物や、投薬が苦手な飼い主様には、とてもありがたいお薬です。

 

術後、すぐにリリースする外猫の不妊手術時には必要不可欠なお薬ですが、反面問題点もあります。

 

<問題点>

①腎機能が低下していたり衰弱している動物、幼若・老齢動物への使用は推奨されない

②1回投与してしまうと、副作用やアレルギーなどの問題が生じても、すぐに体内から取り除くことができない

③お薬が高価

④使用を開始後、残ったお薬を4週間以内に使い切らなければならない(廃棄分が生じる) ※その後8週間以内に改められました

⑤このお薬に頼ると、飼い主様に経口投薬法をマスターしていただけない

 

 

問題点は、投与する動物を選ぶ点と、このお薬特有の使用期限の問題です。

 

触ることのできない外猫など、血液検査を行わずに、腎機能が低下していたり衰弱している動物に、知らずに投与してしまった場合には、最悪死に至ることがあるかもしれません。

 

副作用は起こるとすれば、一般的なセフェム系抗生物質と同様に、食欲不振、嘔吐、下痢、腎障害、過敏症などです。

 

1回の投与で効果が2週間持続するということは、同じ期間、副作用も持続する可能性があるということです。

 

またこのお薬は、溶解液で溶解後、40㎏分の注射液を4週間以内に使用しなければなりません。 ※その後8週間以内に改められました

 

注射器で吸引するたびに、注射器の吸引口の部分の約0.1㎖(1㎏分)の誤差が生じるので、実際はもっと少ないですが、なかなか全部使い切るのは難しいです。

 

なので残った分は捨てることになり、それがとても嫌なのです。高いお薬なのに。。。😭💸 (2020年1月からさらに値上げされます😭

 

メーカーさん、20㎏分くらいの小分けにしてくれたらいいのにと思います。(当然、割高になるでしょうけど…💦)

 

今の日本はアメリカとは違って、小型犬と猫がほとんどですからね。

 

そしたらもっと気軽に使えるのに。。😩

 

とは言うものの、誰にでもお勧めできるお薬でもなく。。。なので使用を躊躇うお薬なのです。悩ましい⤵️😫⚖️

 

複雑です。便利なのは山々なのですが。。。😩

 

 

逆に、飼い主様にはこう言う便利なお薬に頼っていただきたくないという思いもあります。🙁

 

飲み薬だけで注射薬のないお薬はたくさんありますからね。😔

 

飼い主様がお薬を飲ませられないと、将来病気になった時に治療法が制限されることになります。😣

 

そのために、治療を断念するようなことがあるかもしれません。🥺

 

なので飼い主様には、避妊・去勢手術は良い機会ですので、投薬法をぜひマスターしていただきたいのです。😃

 

便利なものに頼りすぎると、人は何もできなくなってしまうのでないでしょうか?

 

カーナビに頼りすぎると、方向音痴が治らず、道を全然覚えられないように。(私だけ?😅)

 

古い考えかもしれませんが、私はそんなふうに思っています。😉

 

 

※時々お問い合わせをいただくのですが、診察を伴わない個々のご質問にはお答え致しかねます。申し訳ありません。