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PTH-intactと高カルシウム血症

 

PTH-intact上皮小体(副甲状腺)から分泌され、血液検査で測定可能なホルモン物質です。

 

カルシウムはナトリウムやカリウムなどの電解質と同様に、生命維持に不可欠な物質です。

 

 

ヒトでは、生体内のカルシウムのうち99%がに、残り1%のほとんどが細胞内に、血液中には約0.1%が存在しています。

 

血液中のカルシウム濃度は消化管腎臓上皮小体ホルモン(PTH)カルシトニン(甲状腺からのホルモン)が作用するすることによって、正常な値に保たれています。

 

 

何らかの異常によって、高カルシウム血症になると、多飲多尿、脱水、食欲不振、悪心、嘔吐、便秘、中枢神経障害、病的骨折が、低カルシウム血症では筋肉の痙攣、全身性の痙攣発作、不整脈、骨折などの症状が現れます。

 

 

血液中のカルシウムは、その半分がアルブミンなどのタンパクと結合し、残り約半分が遊離型のイオン化カルシウムとして存在しています。

(低アルブミン血症があるときは、カルシウムの値をアルブミンで補正します)

 

イオン化カルシウムはホルモンによる調節を受けて生体内で重要な役割を果たしているので、血液検査では不可欠です。

 

 

高カルシウム血症の主な原因は、大まかに以下の原因が考えられます。

具体的には骨からカルシウムが血液中に溶け出しているのです。

(測定不能なほどの高カルシウム血症は悪性腫瘍による可能性が高いです)

 

①原発性上皮小体機能亢進症

②栄養性上皮小体機能亢進症

③腎性上皮小体機能亢進症

④悪性腫瘍による腫瘍随伴症候群

⑤その他(肉芽腫性疾患、上皮小体以外の内分泌疾患)

 

 

レントゲン検査で全身の骨の異常を探し、リンパ節や内臓にも腫瘍病変が見つからない時に、PTH-intact の検査はこれら原因の鑑別のために行われます。

 

原因が分からなければ根本的な治療ができないからです。

 

この検査は外部の検査所へ血液検体を送り測定していただきますので、結果がわかるまで日数を要します。(3~5日)

 

 

症状がすでに現れていることがほとんどですので、すぐに治療を開始します。

 

高カルシウム血症の治療は次の通りです。

①生理食塩水輸液

②利尿剤投与

③ステロイド剤投与

④カルシトニン投与

⑤ビスホスフォネート投与

 

 

ちなみにPTH-rp(上皮小体ホルモン関連ペプチド)は、悪性腫瘍から産生されますので、同時に測定すれば効果的なのですが、こちらの結果は若干ばらつきが見られます。

 

 

高カルシウム血症の原因として考えられる悪性腫瘍

 

1)血液腫瘍(PTH-rp が上昇)

リンパ腫、リンパ性白血病、多発性骨髄腫、骨髄増殖性疾患

2)骨転移を伴う固形腫瘍

乳腺癌、鼻腺癌、肺癌、その他の上皮性悪性腫瘍

3)骨原発腫瘍

骨肉腫

4)骨転移を伴わない腫瘍(PTH-rp が上昇)

肛門嚢腺癌、間細胞腫、扁平上皮癌、線維肉腫、甲状腺癌、肺癌、膵臓癌、乳腺混合腫瘍

 

 

※時々お問い合わせをいただくのですが、診察を伴わない個々のご質問にはお答え致しかねます。申し訳ありません。